面倒だけど愛してるよ

・ ページ33

.

　先日は連絡先を交換した流れで一緒に勉強をするまで出来た。

　星野Aさん。

白鳥沢の二年一組、天文部。

俺のことをどう思っているのかは知らないけれど、少なくとも悪いようには思っていないらしい。

そして見た目の楚々とした印象の割に、意外とぐいぐい来るタイプだということは判明した。

連絡先のくだりとか。

　今日は登校日で、朝練もない。

久しぶりにゆっくり寝たような気がする。

欠伸を噛み殺しながら昇降口で上靴に履き替えていると、後ろから声を掛けられた。


「太一じゃん、はよ」

「おう」


　賢二郎が眠そうに立っていたので珍しいなと言えば、昨日夜遅くまで勉強していたらしい。

真面目かよ。

俺は日付変わる前に寝たぞ。


「太一勉強してんの？ 俺お前が赤点でも助けないけど」

「一応……まあまあそれなりに……」

「ふーん」

「あ、そうだ。賢二郎お前一組の星野さんって知ってる？」

「星野？ 聞いたことない」

「だよなー」


　俺のタイプ云々を差し引いても先日出くわした彼女は人目を惹くような容姿をしていたはずなのに、ちっとも話題にならないのは何故だろうか。

というか白鳥沢の女子のレベルは別にそんなに高くもないので、彼女の容姿はちょっと話題になってもおかしくない。


「なに、なんで？」

「あー土曜日喫茶店で勉強してたんだけど声掛けられた」

「は？」

「あと連絡先交換した」

「はあ？」


　賢二郎は「初対面でよくそこまで出来んな」と呆れたような感心したような息をつくので弁明する。

ぐいぐい押したのは俺ではない。

　テスト勉強期間のせいかなんとなく校内の空気が気だるげで、そんな空気に釣られてだらだらと廊下を歩いていると向こう側から歩いてきた女子生徒とぶつかってしまった。


.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す