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「あ、ごめんなさい……って、川西くん、おはよう」
「え?」
目の前には見たことも無い女子生徒が立っていて、友達に話しかけるようなノリで話しかけられて俺は驚いた。
しかしその声は丁度話題にしていた彼女のもので。
制服はきっちり校則通りに着こなし、眼鏡をかけていて、そこはかとなく地味な格好の彼女は一見しても星野さんだとは気づけない。
なるほど、だから噂にならなかったのか、と一人合点がいった。
「星野さん? うわ、全然気が付かなかった」
「ふふ、よく言われる」
「やっぱり」
「太一、誰」
「さっき話した星野さん」
「……へー」
聞いてきたくせに興味なさそうな賢二郎は、「じゃあ俺教室行くわ」とそそくさと退散していった。
星野さんはそんな賢二郎の背中を見送って、「あーあれが白布くんかあ」と一人頷く。
「白布くんって見た目の割に態度悪いね!」
「ぶっ」
彼女のこの突然何も無いところから手榴弾を投げ込むような発言はなんなんだろうか。
思わず吹き出してしまって、慌てたせいか今度は噎せた。
「え、川西くん大丈夫?」
「あ、うん……星野さんこそ見た目の割に物怖じしないよね……」
というより見た目とのギャップがすごい。
星野さんはけらけらと笑って「それもよく言われる。見た目とのギャップすごいって」、うん、俺もそう思う。
「えーっと川西くん、」
「?」
「嫌なら嫌って言ってください」
「……はい?」
なんだかどこかで聞いたことのあるようなやり取りが繰り出されて、俺はまた目を瞬くしかない。
彼女はちょっと上目遣いでこちらを見遣るので思わずドキッとした。
彼女のちょっと赤らんだ頬がこちらまで伝播しそうで、俺は表情筋を固くする。
元から固いと言われれば固いけれども。
先日とは違ってそこはかとなく地味だが、元の良さは隠れていない。
眼鏡のレンズ越しに目が合った。
「……一緒に星を見に行きませんか?」
「……は?」
また変化球な誘いが来た。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…! (2021年2月14日 10時) (レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます! 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです!個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました! (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桔梗 | 作成日時:2019年11月16日 13時