・ ページ38
.
「それでまたタイミングのいいことに、彗星が見れるって言うもんだから。つい。川西くんのこと誘っちゃって……あ、彗星は流石に偶然だよ」
「それも星野さんが仕掛けたことなら逆に怖い」
「流石に超能力者じゃないからなあ。……引いた?」
彼女はそこで初めて俺の方を向いた。
その耳はよく見たら真っ赤で、俺も釣られて照れ臭くなる。
まあ、悪くない。
悪くないじゃないかこういうのも。
出会って四日、実質三日。
こういう風に出会って付き合うカップルだって世の中にはいるだろう、多分。
「引いてないけど、」
「……けど?」
「可愛いなと思って」
「え」
彼女の耳だけでなく顔まで真っ赤になるので、今度は俺が笑う番だった。
振り回されていた彼女を振り回すのも悪くない。
「笑った……」
「俺だって笑うよ」
「いや、川西くんて全然表情動かないから……」
彼女はそう言ってぷいとそっぽを向いたので、俺は益々笑みを深める。
彼女の無防備な手をそっと取り上げると、先程そっぽを向いたばかりなのに彼女はばっと振り向いた。
「え、かわ、川西くん、手……」
「星野さんて押せ押せって感じなのに押されると弱いんだね」
「あ、あの……」
「俺も星野さんのこといいなって思ってたんだ」
だから付き合わない?
そう言った俺に、彼女は可哀想なくらい真っ赤な顔でこくこくと頷いたので、取り上げていただけだった手を今度は握る。
またびっくりしたように体を震わせる彼女に笑みをこぼした。
「手繋いでもいい?」
「事後報告……」
「Aって呼んでもいい?」
「どっ、ドウゾ……」
「キスしてもいい?」
「え!?」
彼女がいいよと言わなくてもするつもりだったので、軽く唇同士を合わせてからそっと彼女の顔を盗み見た。
大きな目はパチリと瞬かれて、その瞳にキラキラと星空が映り込む。
彼女はしどろもどろになりながら、逃げ場を探すように星空を見上げた。
彼女に釣られて俺も空を見上げる。
「あ、彗星」
「ほんとだ」
空を流れる白い彗星を、出来たてホヤホヤの恋人と見る高二の秋は少女漫画もビックリな青春だった。
-----
脳死状態で書いた川西太一でした。他の短編との差がひどい。
順位・お気に入り登録・評価・コメントありがとうございます! 思っていたよりずっと沢山の方に見て頂けているようで驚いています。
のんびりやっていくので、これからもよろしくお願いします。
128人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…! (2021年2月14日 10時) (レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます! 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです!個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました! (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桔梗 | 作成日時:2019年11月16日 13時