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少ないとはいえ完全にはない訳では無い街灯が薄らと照らす公園で、可愛い女の子と二人で天体観測なんてどんな少女漫画だよと笑いたくなるが、彼女が「あ、見て」と言うので意識はそちらに引っ張られた。
「流星群!」
「え、わ、ほんとだ」
「丁度時期被ってたから見れるかな〜と思ってたけどみれたねえ」
彗星と流星群がいっぺんに見れるとはなんだかお得な気分だな。
彼女に思ったまま告げると、彼女は楽しそうに笑って確かにそうだと頷いた。
学校にいるよりも生き生きとしていて、俺はこちらの彼女の方が好きだなあと思う。
薄暗いというのに、彼女の大きな瞳は星のように煌めいて、艶やかな黒髪は星空のようだ……なんて、考えて、ハッとする。
「うわ……」
「? どうしたの?」
「いや……なんでもない」
何考えてた、俺。
別に邪なことを考えていた訳では無いけれど、顔を覗き込むように振り向いた彼女の目を何となく真っ直ぐ見れなくなった。
もしかして、一目惚れしたのは俺の方なのか。
嬉々として望遠鏡を覗き込む彼女はあどけない笑顔を浮かべていて、俺はそれが眩しくて目を眇めた。
暫く黙ったまま二人で星を眺めていると、彼女が不意に笑い出したので、見上げていた目線を横にいる彼女に向けた。
彼女はこちらを見ることなく、望遠鏡を覗き込んでいる。
「……ふふ、嬉しいなあ」
「なにが?」
「私ね、ずっと川西くんのこと好きだったの」
「へえ、そうなん……だ?」
さらりと言われたので思わず流すところだった。
「うん。試合の全校応援の時に一目惚れしちゃって。だから喫茶店で勉強してるの外の窓から見つけた時は、図書館行くつもりだったんだけど予定変更して隣の席座っちゃったの」
隣の席に座っていたのは偶然でも何でもなく必然だったらしい。
なんと策士なことか。
俺が何も言えずに黙っているのをいいことに彼女は淡々と言葉を続けていく。
「だから話せて嬉しくて、ついいきなり連絡先聞いちゃった」
「すげえ突然だから吃驚した」
「あはは、だよねえ」
辛うじて返せたのは連絡先を聞かれた時の感想だけで、俺は文字通り絶句状態だった。
いや、なんかさらりと言ってたけどこの目の前のちょっとタイプな女の子は今俺のことを好きだと言わなかったか?
全くそんな素振りなく、彼女はニコニコと話を続けるので俺は唖然としてそれを聞くしかない。
なんだこれは一体どういう状況なのだ。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…! (2021年2月14日 10時) (レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます! 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです!個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました! (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桔梗 | 作成日時:2019年11月16日 13時