潮騒～Sound of Waves～ 2 (ページ43)

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あれから私は、にのくんを避けてきた。

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ケイコさんは同室だったから、どうしても接触せざるを得ない。

だけどにのくんを見ると、こんなに好きなのにって。

好きで好きでたまらないのに、私の好きな人は私じゃない別の人を想ってるっていうことが辛くて、なるべく班ごとの集まりでもにのくんのそばに行かないようにした。

にのくんもそんな不自然な私に気付いたのか、必要最低限の会話をするだけになっていく。

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智に聞いたら、あれからあの夜のことをにのくんと話してはいないらしい。

だからあの時、智に抱きしめられていたのがまさか私だとはにのくんは知らないはず。

私は顔を伏せていたし、泣いてる私がにのくんとケイコさんのキスを見てショックを受けたからだなんて、知らないはず。

それでも私とにのくんの様子がおかしいことだけはみんなに伝わるのか、痴話喧嘩でもしたのー？なんて何人もの人にからかわれていた。

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「…、離して、」

「体調悪いんだったら、」

「…にのくんに関係ない」

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ケイコさんが好きなくせに、私なんかにもう優しくしたりないでよ。

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「関係あるとかないとかじゃねぇだろ。お前ここ二、三日ですげぇ顔こけてんの、わかってんのかよ。さっきも見てたけど全然メシ食ってねぇじゃん」

「…ダイエット、」

「なわけあるか。バカか」

「そうなの！私はバカなんだからもうほっといて！」

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私は、にのくんの腕を振り払って走り出した。

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帰りのバスは、さすがに予約した大型バスでみんなで大学まで帰るらしい。

別の班のメイちゃんは、帰りのバスの飲み物とお弁当の準備の担当らしくて、また後でね、と先に部屋を出て行った。

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来た時よりも、荷物が重く感じる。

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ルミさん達と一緒にロッジを出て、バスが着くという駐車場まで歩く途中の小さな池の前で、賑やかな他の大学のサークルの人達とすれ違う。

体格のいい汗だくの男の子達の集団の中の一人が、持っていたバットで素振りをしながら歩いていた。

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ボーッと池の縁を見ながら歩いていた私の視界に、それは入っていなかった。

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「危ない！！！」

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大きな声が聞こえて顔を上げたと同時に、背中に衝撃が走る。

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その瞬間、鼻からも口からも大量の水が押し寄せてきて息ができなくなって、ガボガボという閉塞音しか聞こえなくなった。