潮騒～Sound of Waves～ 2 (ページ13)

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52 ボックスフラワーページ13

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そうこうするうちに一ヶ月が過ぎ、何とか一人でホールの仕事を回せるようになった頃、エミさんの最後の日を迎える。

私がエミさんと過ごした時間はたったの一ヶ月だったけど、それは私にとってとても濃いもので、私はエミさんとの出会いに感謝をした。

智に、感謝した。

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心ばかりの気持ちを表そうと私は小さなブーケを用意して、バイト終わりにロッカールームでお礼を言って手渡した。

エミさんはとても喜んでくれて、智が紹介してくれたのが私でよかったと目を潤ませる。

駅まで一緒に帰ろうと言われて二人で並んで歩いていると、エミさんが前を向いたまま言った。

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「…私があの店をやめる理由、智くんから聞いた？」

「いえ、知ってるとは言ってたけど内容までは」

「そう、…私ね、潤くんのことが好きだったの」

「えっ！！」

私が驚いてエミさんの顔を見ると、エミさんは照れ臭そうに笑う。

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「私の片思いなの。告白したけどフられちゃって。でも一緒にいると好きな気持ちが募って辛くなっちゃってね。

潤くんは告白した後も今までどおり接してくれてたんだけど、それも辛くて。会うと忘れられないから…離れようかなって思って」

「そうだったんですか…」

そんなことがあったというのに、一ヶ月も私のために留まってくれたことに感謝しかない。

改めてエミさんを大人だなと思った。

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「見て、これ」

エミさんは持っていた大きな紙袋を開けて私に見せる。

その中から出てきたのは、紫と黄色の薔薇で埋め尽くされた、まるでお花畑のようなボックスフラワーだった。

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「素敵！！私、こんなのもらったことないです。…潤くんからですか？」

「そうなの。今までお世話になったからって。最後にこんな形に残るものをもらっちゃったら忘れられないじゃないね？笑」

エミさんはそんな風に言ったけど、とっても嬉しそうだった。

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「なんか…潤くんとエミさんのイメージですね」

「え？」

「このお花。紫の薔薇が潤くんで、黄色いのはエミさんみたい。私、そんな感じがします」

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私がそう言うと、エミさんは華やかな箱の中身を見つめて今にも泣きそうな表情になる。

どうしよう、変なこと言っちゃったかも、って焦ってたら。

「ありがとう。そんな風に言ってもらえて嬉しい。Aちゃんも智くんと仲良くね」

ってエミさんはそんな訳のわかんないことを言って目尻を拭った。