第十一話 ページ13
火はどろろが起こしてくれた。
慣れているのか、その手際のよさにはAも少し感心した。
魚を枝に刺し、火の周りに立てる。
どろろ「これでよし。暫くすりゃ、美味く焼けるぜ」
「慣れているな」
どろろ「まあな。こんくらいのことはお安いご用だ」
そうか、と言い、Aは近くにあった流木を枕に踞った。
どろろ「姉ちゃん、寝んのか?」
「少し疲れた。焼けたら起こしてくれないか」
どろろ「わかった」
目を閉じようとすると、身体に何かがかけられた。
「…百鬼丸?」
百鬼丸が身に纏っていた布をかけてくれたのだ。
当の本人は、黙ったままAを見つめている。
「…ありがと」
百鬼丸の手を取ったまま、Aは眠りについた。
「…ん…」
肌寒さで目が覚めた。
陽はとっくに沈んでおり、川岸の向こうに町の明かりがぼんやりと見える程度だった。
魚を焼いていた火は消えている。
どろろ「起きたか、姉ちゃん」
「起こしてくれなかったのか」
Aがムッとした表情を見せる。
どろろ「(こんな顔もするんだな…)いやいや、何度も起こそうとしたよ。けど姉ちゃん、死んだみたいに全っ然起きねえし、疲れてるだろうからそのままにしてたんだ」
「そう、か…」
かなり深い眠りについていたようだった。
Aの目の前に、焼き魚が差し出される。
どろろ「姉ちゃんの分。冷めちまったけど美味いぜ」
「ああ…ありがとう」
焼き魚を受け取り、魚の腹にかじりつく。
残った内蔵が少し苦かった。
魚の骨までペロリと平らげ、頭は捨てた。
どろろ「頭食わねえの?勿体ねえ…」
「目が苦手なんだ」
どろろ「へー、姉ちゃんにも苦手なもんとかあるんだな」
「悪いか」
どろろ「いいや?」
どろろはいたずらっぽく笑うと、大きな欠伸をした。
どろろ「オイラもそろそろ寝るか。姉ちゃんは?」
「私も寝る。正直、さっきのではあまり寝れた気がしない」
どろろ「そっか。んじゃ、おやすみ」
どろろはその場で横になり、大の字で寝始めた。
「…百鬼丸」
百鬼丸は流木に座ったまま、燃え尽きた薪を見つめていた。
Aも隣に座る。
スッ
「!」
百鬼丸が自分の頬をAの頬にくっつけた。
(私の真似…?)
そう思うと、Aの口元に笑みがこぼれた。
「寒くない?」
先程百鬼丸にかけてもらった布と一緒に百鬼丸を包む。
(温かい…)
そのせいか、あれほど寝ていたのに更に睡魔が襲ってきた。
「…おやすみ、百鬼丸…」
小さく囁き、静に目を閉じた。
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輪廻 - めっちゃ面白いです!(^ ^) 続きを楽しみにしてます! これからも頑張ってください! (2019年7月11日 12時) (レス) id: bf927136c6 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 何が総合2位wwオリフラ立てたからじゃん (2019年6月27日 20時) (レス) id: 50d994e323 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。外されないなら違反報告します (2019年6月27日 18時) (レス) id: c56aad1eeb (このIDを非表示/違反報告)
姫鬼(プロフ) - siriusuさん» ありがとうございます、励みになります!! (2019年4月15日 19時) (レス) id: 72603904b9 (このIDを非表示/違反報告)
siriusu(プロフ) - とても面白いです!続き凄く気になります!更新頑張って下さい!q(^-^q) (2019年4月3日 16時) (レス) id: ee4308919b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姫鬼 | 作成日時:2019年2月17日 11時