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S side
いくらか気持ちを落ち着かせて席に戻ったら
松本さんが店員さんと何やら話していた。
「ただいまでぇーす」
落ち着かせたつもりだった気持ちも
こいつを見るとまた心臓が跳ねた気がした。
…いや、もう、触れたい。触れてしまいたい。
耐え切れなくて、あくまで自然に、と意識して
Aの背中に置いた手。
たったそれだけのことで死ぬほどドキドキしながら、
席に座ると…
…なんだ？
この…
びっみょーーーーーな顔。
目は潤んでて、…あ、酒のせいか。
眉毛ハの字にしちゃって
じっと俺のこと見てて。
…可愛い。
かわい、すぎる…
…っ、笑わないと、笑い飛ばさないと！
いつもの俺じゃないって思われたら…やばい。
「ん、なに、どしたの変な顔して(笑)」
A「…っんな！もともとこういう顔なの〜！」
ンハッ！慌ててる。
大丈夫、いつもの、俺らだ。
そのあとは日本酒を飲みながら、
松本さんとサッカーの話をして。
気づかぬうちにかなり盛り上がってしまった。
ふと気づくとAの目が半分開いてなくて(笑)
もう眠いんじゃん、こいつ。
珍しいな。酔ってんのかな。
…もう、帰るか。
「そろそろ…行きます？」
松本さんも終電乗りたいって言って、帰る準備を始めた。
結局、先輩にはおごられとけ！とか言って
ご馳走になってしまった。
俺が誘ったのに、なんか申し訳ない。
こういうとこ、やっぱすげぇな、松本さんて。
厚かましくないっつーか…
うん、俺もこれを目指したい。
外に出ると、少し日中よりもひんやりした風。
隣を見ると、その風を気持ちよさそうに受けるA。
こいつ、このまま寝ちゃうんじゃないか？(笑)
…っていうか電車乗ったら絶対爆睡するやつだろ！
乗り過ごすやつだろ！！終電なくなるやつだろ！！！
ダメダメ、絶対ダメ。
「A？
珍しいね、目ェ半分開いてねぇぞ？
大丈夫？帰れる？送る？」
A「大丈夫大丈夫！意識ははっきりしてるし、電車では寝ないから。
ありがと。」
あ、…
今の、“ありがと。”…と、その笑顔。
破壊力…やべぇ…
それ聞いてなんとも言えない気持ちになっちゃって
これ以上Aといたら心臓壊れる気がして
松本さんにAを任せて
俺は反対方向に向かった。
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作者名：ぽろ
| 作成日時：2016年5月11日 20時
