気がついたら番外編

短編 T×Ki 1 ページ21

信じられない！もう知らねぇよ！
むしゃくしゃするしイラッとする。
ちょっとくらい･･･いや、かなりだけど。
イケメンでスタイルいいからってなんだよ！




｢ねぇ、玉森くん、明日のランチなんだけどね･･･｣


偶然聞こえてきたあの会話。
おい、待てよ、明日のランチだと？
俺との約束をキャンセルしてまで優先させた用事が、あの美女とのランチかっ！？
嘘だろ、マジで。


でも裕太のあの笑顔とその隣の美女の笑顔が、それが嘘ではないことを物語っているような気がして。
なのに、帰る家は同じなんだ。
勘弁してくれ、会いたくない日もあるんだよ･･･


｢僕ね、みっくんのこと好きだよ｣


｢みつ、俺と付き合って｣


｢ねぇ、宏光、一緒に暮らそう｣


俺たちの関係の始まりは、いつも裕太からだった。
別に流されたわけじゃねぇし、昔からちっちゃい裕太がそばにいるのが当たり前だったし。


まぁ、途中から俺よりも大きくなっちまったけど。


それでも裕太のことは嫌いじゃないし、付き合うのも一緒に住むのも全く抵抗なかった。
結果として俺は裕太の気持ちを受け入れて｢恋人｣ってポジションにいるんだけど。


恋人って、俺だよね？
男だけど･･･俺、裕太の恋人だよね？
なのになんで･･･？なんで･･･


俺との約束蹴ってまで、あの美女と一緒にいること選んでんだよ！！


｢裕太、お前なんかもう知らねぇ！あんな家出ててってやる！｣



美女といる裕太に啖呵を切って、走り去ったのはどのくらい前のことだろう。
はっきり言って、言い逃げだ。
そう、俺は裕太から逃げたんだ。


言い訳くらいあっただろうに、その言い訳も聞かずに逃げた。
だって･･･聞きたくなかったんだ･･･
裕太の口から、俺への否定の言葉、拒否の言葉を･･･


聞く勇気がなかった。

2→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す