十八話 ページ19
少し話をすると、土方さん、近藤さん、山南さんは仕事があると自分の部屋へ戻っていった。
井上さんは、空になった全員分の湯飲みを持って歩いて行き、平助さんと永倉さん、原田さんは、俺に負けたことが悔しいのか稽古をすると言って道場の方へ行った。
それを俺たち3人は静かに見ていた。
すると、沖田さんも歩いていった3人の背中を見ながら、立ち上がった。
沖田「んじゃ、僕は散歩でもしてくるよ。」
そう言うと、スタスタとどこかへ行ってしまった。
少しの間沈黙が続いたが、それを遮るように俺は下を向き口を開いた。
A「兄さん…。あのさ。」
斎藤「なんだ。」
すぐに返事が返ってくる。
A「兄さんはさ、帰ること…嫌じゃないの?」
俺は、とても小さな声で言う。
兄さんは、少しの間黙っていた。
何も言わない?と思い顔を上げ兄さんを見る。
兄さんの表情から何を思っているのかは読み取れなかった。
A「兄さ 斎藤「A…。」?」
何?と無理やり笑顔を浮かべ兄さんを見る。
すると、ぽんっと頭の上に手が載せられた。
斎藤「無理に笑う必要はない。」
兄さんは、いつもの表情で言う。
兄さんは、手を下ろし目の前にある桜の木を見て口を開いた。
斎藤「どうなんだろうな。小さい頃にあの生活が嫌で家を出て、近藤さんの道場に世話になって…俺は、嫌なのかもしれないな。」
兄さんはそのまま黙った。
A「それなら… 。」
俺は、話そうとすると兄さんが俺を見た。
斎藤「A。この話はここではしないほうが良いだろう。」
そう言うと兄さんは立ち上がり、歩き出そうとした。
俺は、パシッと兄さんの手を握った。
A「まって、どこ行くの?」
俺は、真顔で言う。
しかし、兄さんは気にせず口を開いた。
斎藤「今日は、俺と総司が夕餉の当番だ。だから、逃げた総司を捕まえに行く。」
あ、さっきのは逃げてたのか。そう思ったが口には出さなかった。
A「じゃあ、俺も探すの手伝うよ。」
俺も立ち上がろうとすると、兄さんが手で制した。
斎藤「お前は、さっきの手合わせで疲れただろう。時間になれば呼びに来る。それまで、ここでのんびりしていろ。」
相変わらずの表情でそれを言うと、兄さんは手を静かに離し歩いていった。
その場に、ポツンと俺は取り残される。
髪型はめんどいので今日はずっとこのままでいよう。
のんびりねぇと頭の中でいい、まだ蕾状態の桜の木を見ていた。
少し冷たい風が俺の頬を撫でる。
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莝理亜(プロフ) - コメントありがとうございます!続編も楽しんで下さいね! (2018年12月24日 21時) (レス) id: ca0ec47182 (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - コメント失礼します。凄く良かったです。 (2018年12月24日 9時) (レス) id: aa472647a8 (このIDを非表示/違反報告)
莝理亜(プロフ) - コメントありがとうございます!更新する時間があまりありませんが、楽しんでいってください。更新、頑張りますね! (2018年6月23日 0時) (レス) id: ca0ec47182 (このIDを非表示/違反報告)
露 - とても面白かったです!また楽しみにしてます、頑張ってください! (2018年6月20日 20時) (レス) id: 1a0123f488 (このIDを非表示/違反報告)
莝理亜(プロフ) - コメントありがとうござます!面白いなら良かったです!!!!続き頑張って書きますね!今週は、少し忙しいのであげられるかわかりませんが、忙しくなかったらだいたい三日であげる予定です!これからよよろしくお願いします。^ - ^ (2018年1月23日 16時) (レス) id: 9add19d2e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ざりあ | 作成日時:2018年1月10日 18時