Vanilla【YG】 (ページ7)

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「…ごちそうさまでした！！」

幸せで、体が満ちた。
満ちているのに、さっきより心は軽い。

ゆっくり呼吸をしながら、コーヒーの香りをたくさん体の中に入れる。
ふと、ある疑問が思いついた。
「Orange、って言うのはどういう意味なんでしょうか？由来があったりとか」
「ああ、それはユンギが決めてくれたんですよ」
「花言葉とかからです」
「ユンギは花言葉大好きマンですから」
「いや好きですけど…」

さっきも出てきたコーヒーの花言葉だったり、見かけによらず可愛いことをよく知っている人だ。しかも好き、だと。ロマンチストだったりするのだろうか。
…よくない癖だ、人のことを無駄に深く勝手に想像するのはよくない。といいつつ無意識にしてしまっているからこれがやはり癖というものだろう。直らない。

「純粋、優しさ、美しさ、とかです。あと、寛大、気前のよさ、とか。花、実、木、それぞれに花言葉があるんですが、どれがどれの花言葉かは忘れました、すみません。」

いやいや、すごすぎるだろ。知能の低い感想しか出てこない自分を殴りたい。
花と実と木で違うことを知ってる時点でレベルが違う。
「すごく、素敵な店名ですね」
気前のよさ、とか。ぴったりだ。

「照明とかその他もOrangeに合わせてます」
「ユンギはこだわり屋なんですよ」

照明の色やインテリアの色にはさっき気づいていたが、もう一度よく見るとオレンジがかたどられたものがたくさんある。
「すごい…」

ユンギさんは心なしか嬉しそうな顔をしている。なんだかかわいいと思ってしまった。
そしてユンギさんを誇らしそうにしてニコニコしているジンさんも、かわいい。

名残惜しいが、結構長居してしまったからそろそろ出よう。もう一度だけ、この場所の空気をたっぷり吸い込んだ。初対面の人と過ごした時間とは思えないほど、自然体でいれる時間だった。
「それでは、また来ます！」
「是非またいらしてくださいね！」
「ありがとうございました」

扉を開けるとチリンと鈴の音がして、お辞儀をする二人に会釈しながら、扉を閉めた。

こんなになにかのお店で誰かと仲良くなったのは初めてかもしれない。こんなことってあるんだな、と思う。ごく自然に仲良くなれたし、二人ともとても素敵な人だ。身近なところに出会いが潜んでいることを感じた。

カフェで流れていた音楽を頭の中で流しながら、軽い足取りで帰路についた。

特別だけれど、どこか何気ない、そんな一日になった。