Vanilla【YG】 (ページ6)

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苦味に、一瞬だけ顔をしかめる。

けれど、けれど、

「あ、美味しい…！」

とても美味しかった。
私の苦手なあの酸味がなくて、まろやかで
心地良い苦味が広がっていく。
すごい、豆の種類とかで変わるんだろうか。
美味しいと私がいった瞬間、二人の顔がぱっと明るくなったのが分かった。

「すごい、すごい美味しいです、びっくりしました」

口の中には後味が残っている。すっきりしているような、そんなかんじ。ミルクや砂糖を入れたほうが断然おいしいと思っていたが、ブラックは美味しいうえに、くせになるようだ。

「気に入っていただけましたか？」
「もちろんです！」

ユンギさんは、また微笑んだ。

「お砂糖、ミルクは」
「もう、大丈夫です。」
「かしこまりました」

そして、さらに笑う。口角が綺麗だなぁ、と思う。二人ともぷるぷるの桃色の唇をしていて、羨ましい。

「さて、僕の特製スコーンもぜひぜひ！コーヒーとの相性抜群ですよ〜」
「ではでは、」

包み紙を持ってかぶりつく。
口の中にチョコレート味が広がり、クルミが砕けていく。
いや、超美味しい。革命。

「超美味しいです！」
「ありがとうございます！」

手作りってなんなんだろう。
こんなのどうやったら作れるようになるんだろう。でも自分の考えにもお構いなしに、私はスコーンを無我夢中で食べ、間にコーヒーを飲んで風味が合わさるのを楽しんだ。

食べれば食べるほど、飲めば飲むほど、心の充電がみるみる増えていくようで、リラックス出来る空間だからというのもあると思うが、どうやっても修復できなかった疲れなんかが、魔法のように消えていった。

幸せを食べる、カフェ。

そんな言葉が浮かんだ。

Orangeの名に相応しい暖色系の空間の中、幸せな時は秒針と共にゆっくりゆっくり流れていった。