Vanilla【YG】 (ページ5)

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「ユンギヤ、できた？」
「ん、」

ユンギさんは私の目の前に湯気を上げるコーヒーを置いた。それに続き、ジンさんがデザートを持ってくる。

「お待たせしました、本日のデザートセットになります」
「今日はチョコスコーンです！」

コーヒーの香りとチョコの香りがふんわりと窓から入った風に巻き上げられる。

「…美味しそう」

思わずそうつぶやいた。
自分がコーヒーの飲まず嫌いだということも忘れ、コーヒーに手を伸ばそうとした。
そしてスコーンもめちゃめちゃに美味しそうだ。とにかく、すべてが美味しそう。

「コーヒーの木の花言葉、何だか知ってますか」
「いえ、コーヒーにもあるんですね花言葉」
「ユンギはコーヒー大好きマンだからね」
「うるさいです、好きですけど」

ひと息あけて、ユンギさんは私の目を見て言った。

「一緒に休みましょう、です」

ユンギさんは軽く微笑んだ。
柔らかくて、さっきまでの態度が嘘のように甘かった。コーヒーの苦味も飛んでいってしまうほど。

ユンギさんの笑顔を初めて見た瞬間は、スローモーションのように感じた。

ユンギさんのこだわりのコーヒーに込められた意味を、私は知った。

「あ、ミルクとお砂糖使いますか？って言おうとしたけど是非まずそのまま飲んでみてください！ユンギのコーヒーホントに美味しいので！」
「こんなに美味しい美味しいって宣伝してくるカフェ店員ジンヒョン以外いないと思います」
「んー、でも、一人の人間としておすすめしたいかな、ここの店員じゃないとしてもおすすめしたくなるの」
「じゃあ、…いただきます」

正直とっととミルクをいれたかったけれど、ここまでおすすめしてくれるからには飲んだほうがよさそうだ。
いつぶりかに飲むブラックコーヒーにちょっと躊躇ったけれど、私はコーヒーカップを持ち、口をつけた。