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story14 ページ15

「漫画みたいな登場やな、跡部」

「忍足、離れろ」


何故ここに、と眉を潜めていると、忍足侑士は私の髪から手を放すと両手を上げて見せた。


「今ええとこなんやけどなぁ」

「忍足、うせろ」


冗談にしか聞こえない忍足侑士の言葉に、冷たい声を浴びせる跡部景吾。

すると忍足侑士はフッと笑みを浮かべた。


「そう怖い顔しなさんな。
ほな、邪魔者は退散するわ」


そう言った忍足侑士は優雅に席を立ち、気付けば跡部景吾と2人きりになっていた。


「何の用?」


ああ、そう言えばいつからか彼に敬語を使わなくなっている。

まぁ今はそんなことどうでもいい。

そう思って目の前の彼を睨み上げるが、跡部景吾はなにも答えなかった。


「貴方が来たせいで、父の計画が台無し」


そう言ってみても、返ってくるのは無言だけ。

彼はただ、私を見つめるだけだった。

その視線に耐えられなくて、思わず目を逸らす。



「A」

「……っ」


痺れるようなその声が紡いだのは、私の名前。

一瞬、誰を呼んだのだろうと思った。

だって、私を名前で呼ぶ人間なんていないから。


「A」


そして彼はもう一度、私を呼んだ。

何年ぶりだろう。

自分自身でさえ忘れていた名前を呼ばれるのは。


学校の人間は私を冷血ロボットと呼ぶ。

父の知り合いは、私をご令嬢としか呼ばない。

父でさえ、私を呼びはしない。


誰も私をAとして見たことなんて一度もない。

どうあったって私は咲間の一人娘。

誰も私の名前なんて知らない。


「A」


どうしてだろう。

こんなに泣きたくなるのは。

どうしてだろう。

もう一度呼んで欲しいと思うのは。


「呼ばないで」


どこかに置いてきた心とは裏腹に、私の口は脳に従って、拒絶の言葉を吐いた。


「二度と、呼ばないで」

「何故だ?」


何故って?

愚問ね。






「寒気がするわ」


勘違いしてしまいそうになるからよ。









.

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SHINO(プロフ) - 菫-sumire-さん» ありがとうございます。こんな私に憧れる要素があるか、わかりませんが、ありがたいです。本当に未熟で、読みにくい部分もあるかと思いますが、皆様に納得していただけるように頑張りたいと思います。とても温かいコメントをありがとうございました。 (2016年2月7日 13時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 梅田さん» ありがとうございます。キャラの特徴や性格は私なりに研究していたつもりです。なのでそう言っていただけると本当に嬉しいです。氷帝にとって跡部さんは絶対的な存在だと思うのでそれを表現できていてよかったです。素敵なコメントをありがとうございました。 (2016年2月7日 13時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
菫-sumire-(プロフ) - SHINOさんの小説、影から読ませていただいておりました。憧れるところなんて正直言い切れません.....他のどの作品も楽しみにしています。 (2016年2月7日 12時) (レス) id: dbfe85220f (このIDを非表示/違反報告)
梅田(プロフ) - それぞれのキャラの特徴を良く捉えた上での跡部至上主義な発言がとても好きです。とりあえずの完結、おめでとうございます。続編も楽しみにしてます。SHINOさんの作品ですから、SHINOさんのペースで進めてください。一ファンとして影ながら応援しております。 (2016年2月7日 11時) (レス) id: 78d0f2e1a4 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - ゆっきーさん» 返事がおくれてすみません!続きを楽しみにしていただけるのは、作者として本当に嬉しいです。ワクワクドキドキしていただける展開にしていきますので、よろしくお願いします。素敵なコメントをありがとうございました。がんばります! (2016年1月25日 22時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SHINO | 作成日時:2014年7月26日 13時

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