ただ、愛が欲しかった。- fifth story -

199. ページ19

「光がね、好きなの雪」

「へぇ彼が」

「そう、くだらない理由でしょう」

「くだらないね」

彼がくすりと笑い、彼女もつられて笑う。

「光の好きなものになりたかったんだ」

ずっと、ずっと。
届かない彼への真っ直ぐな思い。

彼女らしくもあり、彼女にしては弱々しかった。

「本当に好きなんだね」

何が、とは言わない。
寂しさを少しも滲ませず幸村は空を仰いだ。
そんな彼に隠す必要も意味もなく、Aは小さく頷いた。

「気付いたのなんか最近だけどね」

気付いた時にはもう遅いと言うけれど、彼女の場合は違う。
気付いてしまったからこそ、なのだ。

不透明で真っ白で、それでいて冷たい。


「で、俺に聞きたい事って？」

幸村はそっと話をそらした。

「前さ、好きな子がいるって言ってたでしょ？」

「ああ、うん」

あんなの嘘だ、なんて言えるはずもなくとりあえずと頷く。

「それ誰だか教えて！
協力するから」

「え、」

まさかそんな事になるとは露程も思っておらず、幸村は困惑した。

「精市にはたくさんお世話になったし、これくらいしかできないから」

Aにとってはせめてもの恩返しのつもりだった。
これほどまでに優しくしてもらいながらも何も返せていないのをずっと気にしていたのだ。

「いや、いい本当に大丈夫だよ」

どうしてこんな所で告白しなければならないんだ。

「なんでよ、力になりたいのに」

しょぼんという顔文字のような表情をみせるAに幸村は思考をめぐらせる。

告げることは許されない、言ってしまえば全てが崩れる。
あれだけ望んだ彼女の幸せを隣で見ることもできなくなる、そんなの絶対に嫌だ。

そう改めて認識して、幸村は口を開いた。

「叶えるつもりはないんだ」

「どうして？」

「彼女にとって1番大事なものを知っているから」

俺はそこには入れない。
幸村はあきらめたように笑った。

「そっか」

その気持ちが痛いほどわかってしまうAはそれ以上聞こうとはせず、黙ってそれを受け入れた。









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お久しぶりです。
SHINOです。
まだ読んでくださる方がいらっしゃるかはわかりませんが、自分の中でこれを完結させていないことが心残りだったので、こうして戻ってきました。

コメントやメッセージは全て読ませていただいております。

後ほどお返事させていただくのでお待ちください。

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