九十二話 ページ18
産屋敷邸を離れた私は、時透兄弟を連れて家へ帰って来ていた。
『二人共、まず紹介したい奴らがいるんだが』
無｢家族？｣
『血は繋がってないけどな。私が任務先で保護した子なんだ』
有｢へー｣
ｶﾞﾗｯ
『ただいまー。春、いるかー？』
そう言うと、奥の方から二つの足音が聞こえてきた。
春｢A姉！おかえ…り……？｣
曲がり角から出てきた瞬間、春が固まった。
凛｢…あー、えっと……おかえりなさい…？｣
春の後ろから来た凛も、一瞬固まったがすぐに動き出し、私に近寄ってきた。
『あぁただいま。凛もいたんだな、今日の修行は終わったのか？』
凛｢う、うん。師匠が今日任務だから、こっちで鍛錬してたんだ。……あの、Aさん。後ろの人達は…｣
『ちゃんと説明するから、春や二人と一緒に居間で待っててくれ。着替えて来るから』
凛｢分かった。じゃあ……えっと…｣
…あぁ、二人の名前か？
有｢時透有一郎だ｣
無｢と、時透無一郎です｣
凛｢有一郎君と無一郎君ね。私は来栖凛。向こうで呆然としてるのが春だよ。じゃあ居間まで案内するから、着いてきて｣
そう言って、凛は二人と呆然としている春を引っ張り、居間へ向かった。
『…よし、まずはこの血塗れの服を着替えなきゃな』
ーーーーーーーー
春side
……A姉が、男の子を連れて帰ってきた。
見分けがつかないくらいそっくりな二人だった。
A姉のことを信頼しているのを、見ればよく分かる。
……また、A姉の大切なものが増えた。
分かってる。分かってるよ。
神様は私を捨てるようなことはしない
神様がすることに否を唱えるのはダメだ。
私に力があれば良いけれど、無力な私はそれをする権利が無い。
否定したところで代わりに私が何か出来る訳でもないのだから。
……だから、
だから認めよう。神様がすることは間違っていないのだから。
きっと私も仲良くなれる。だって……
ーーーー仲良くしなきゃ、耐えられない。
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作者名：小石 | 作成日時：2020年7月24日 2時
