桜

嫉妬-アイドル×女優- ページ1

ラブコメのドラマの話をもらった時
正直不安だった


お相手もお相手だったし……

だって天下のJ事務所


前は共演させてもらったとしても
私はただの同僚役とかだったから不安はなかったけど


今回まさかまさかのヒロイン役


すごくありがたいけどすごく不安でもあった……


もしこのドラマがコケたりしたら私が叩かれるかも

ちゃんと演技できるかな



いつもとは違うプレッシャーの中の撮影だった



撮影の初日
『Aさん入られまーす！』
と言うスタッフさんの声と共にスタジオ入り

「おはようございます！
　よろしくお願いします！」

元気に笑顔で……
この世界に入った時に散々マネージャーさんから言われた言葉


だけど正直私は人見知りだった


現場では私ではなく
『松本A』
を役として演じることで人見知りの私をできるだけ封印していた


そんな私を共演者のみなさんと繋いでくれたのが
藤ヶ谷さんだった


主演ってこともあってすごく気を遣ってくださっているのか
常に輪の中心にいて
満遍なくみんなに声をかけてくれた


そのおかげで私もいつもよりも早く共演者さんやスタッフさんと仲良くなれた気がする


毎日撮影が楽しくて


あっという間の日々だった



こんなに撮影が終わらなければいい何と思った仕事は初めてだった





.



.



.




『Aさん、クランクアップでーす！』


終わらないでほしいと思っていても終わりはやってくるもので……

何のトラブルもなく
無事に撮影は終了し
私はクランクアップを迎えた


スタッフさんの声と共にパチパチと温かい拍手をいただく


「ありがとうございました！」

私も笑顔でみなさんにお辞儀をした


『お疲れさまでーす！』


声の方を振り返ると花束を持った藤ヶ谷さんが立っていた


「え？！
　今日、撮影ないですよね？」


『Aさんがクランクアップって聞いたから。』


「えー！
　わざわざ来てくださったんですか？
　お忙しいのにありがとうございます。」


『七瀬ちゃん、お疲れさま！』


役名で呼ばれて花束を差し出したから
その花束を受け取った


「ありがとうございます。」


終わるのが寂しくて少し泣きそうになったから
ギュッと奥歯に力を入れて涙がこぼれないように耐えた

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