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『じゃ、田中。
Aをマンションまで送ってやれ。』
『はい。』
ずっと黙って話を聞いていた田中さんがやっとここで口を開いた
「あ、あの社長。
同棲の相手って……。」
『行けば分かる。
心配しなくても変なやつじゃないから安心しろ。』
ここでは何も情報を教えてくれないようだ
私は観念して田中さんの後を追った
言われるがまま田中さんの運転する車に乗って移動する
田中さんはエンジンをかけスマホで位置関係を確認していた
「……田中さんも今日聞いたの?」
『うん。
ほんとにさっき。』
「そっか……。」
ほんとに知らなかったんだ
はぁ………
思わずため息が漏れた
「ねぇ、恋人として振る舞えってさ……
体の関係もありってこと?」
私は気になっていたことを聞いた
『社長はありだと言ってました。』
「それって……枕しろってこと?」
『いえ、あくまで恋人関係としてです。
……お相手は出演権だったりそう言うことに関与する方ではないので。』
「え?
相手聞いたの?」
『うん。
聞いた。』
「……誰なの?」
『Aが心配するような相手ではないと思うよ。
業界での評判もいい人だから。』
「え?誰?
気になる。」
『行ったらすぐ分かるよ。』
ここでも田中さんはまだ内緒にする
まぁ、でも田中さんがそう言うなら悪い相手ではないんだろうなとは思った
私はこれから始まる期間限定の同棲生活への不安で
無口になっていた
それを察しているであろう田中さんも私をそっとしてくれて
車内はずっと無言だった
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作者名:桃マスカット | 作成日時:2023年8月2日 14時