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「わ、私!
 がんばります!」


手が震える


『がんばってるのはわかってる。
 ただ……やはり数字がないと……な。』


社長に真っ直ぐ眼を見つめられて
言いようのない圧を感じた

頭の中に自分の心臓の音が響く感じがした


がんばりますって言ったけど今だって十分頑張っているつもりだった



……あぁ、私は何をがんばればいい?



頭の中はパニックで……
ラストチャンスと言われた動揺が隠しきれないでいた


『それで……。』


社長が再び口を開いた


『Aのマネージャーとかトレーナーとかいろんな人間から話を聞いた。』
 

『Aは歌は上手い。
 ただ……テクニックで歌ってるだけだと言うやつが多い。
 正直俺もそう思う。
 感情が入ってない感じなんだよな。』


『それだとやっぱり聞き手の心は動かないんだよな。
 だから飽きられる。』


社長の言葉が弓矢のように私の心にグサグサと突き刺さる


『Aに必要なのは経験だと思う。
 手っ取り早く感情を学んで欲しいから、
 あることを考えてある。』


そう言って社長はニヤリと笑った


あること……?
嫌な予感しかなかったが私にはもう拒否権はない


『1番簡単に学べる感情ってのは恋愛感情だと思う。
 元彼は何人いるんだ?』

……結構セクハラ気味ですけど

「3人です。」

『ふーん。
 今は?』

「いません。」

『どれくらい?』

『……2年半くらい?』

なんでこんな合コンみたいな質問をされるんだろうと思いながらも正直に答えていた


『よし。
 じゃ、今日から3ヶ月ある人物と同棲してもらうから。』


「えぇっ?!?!」


ど、同棲?!


「どう言うことですか?!」


『言葉通りだ。』


「えっ……そんな急に言われても……。」


『大丈夫。
 3ヶ月の期限付きだから。』


そう言われても……
同棲って……


………それって体の関係もあり?


『3ヶ月経ったらたとえお前が相手のことを好きになっていても同棲は解消だ。
 ただし同棲期間中は恋人として振る舞え。』


恋人と……して


『その期間で感情を学ぶことが5枚目のシングルを出す条件だ。
 レコーディングしていいと思わなければ発売しない。』


「わ、分かりました。」


このことは私の意志など関係ない

有無を言わさず決定のようだった

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作者名:桃マスカット | 作成日時:2023年8月2日 14時

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