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階段で最上階まで上がる
17階にあるこの会社の社員食堂はとても眺めがいい
まだ少し早い時間だがそこそこ席は埋まっていた
ワーキングスペースもあったりするので朝食を兼ねてPCワークをしたりしている人もいる
食事もできるし
カフェとしての利用もできるようになっている
私はさっき朝ごはんを食べたばっかりだったし……
まだランチって気分でもなかったから
コーヒーとクッキーだけもらって1人掛けのスペースに座った
ボーッと窓から外を眺めながら
ゆっくりとコーヒーを飲んだ
30-40分経った頃に田中さんが私を探してやってきた
『A!』
呼ばれた方を振り返ると
すでにもう私のすぐそばまで歩いてきていた
『一緒に来て。』
「あ、はい。」
食べかけのクッキーをポイっと口に投げ込んで
残り少しだったコーヒーでゴクンと喉に流し込んだ
「話ってなんだったんですか?」
歩きながら田中さんに聞いたけど
『それは社長から聞くと思うから。』
とだけ言われた
……ですよね
その前に聞いて心の準備をしておきたかったのに
田中さんから聞き出すことは無理だった
まぁ、この口の硬さがあるから信頼してるんだけどね
でも……
田中さんが慌ててる様子は見えなかったから
そんなに悪い話でもないのかな?
と思った
16階まで降りてくると
もう秘書室と社長室の間のドアは開け放たれていて
中では社長が私を待っていた
『待たせて悪かったな。』
「いえ。」
私と田中さんは促されてソファに並んで座った
パタンと秋山さんが社長室のドアを閉めた
一瞬の間があってすぐに社長は口を開いた
『なんの話かと思ってるよな。』
「はい……まぁ、思ってます。」
『Aはもうシングル4枚出してるよな?』
「はい。」
『デビューシングルの宣伝には力を入れたつもりだ。
そして……その後の3枚はなかなか伸び悩んでるよな。』
「……はい。」
『正直そろそろラストチャンスかなと思ってる。』
ラストチャンス
その言葉に心臓がドクンと跳ねて
サーっと体温が下がっていく感じがした
私……もう次で終わり??
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作者名:桃マスカット | 作成日時:2023年8月2日 14時