#No! No! (ページ28)

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『いやいや……
　まぁ、でもマジな話するとSM APとか嵐でもメンバーが演出してたんだよ？
　あの人たちに比べたら俺たちなんてまだまだだから。』

二階堂さんはウインナーをチーズに付けて頬張って
そのままワインを飲み干した

『俺たちの目指すところはもっと高いところだってミツがいつも言っててさ、忙しいとかそんなことは理由にならないんだよ。』

そう言われ

私は頭をガンッと殴られたような衝撃を受けた

あんなに売れていると思っていたキスマイ

彼らはその立ち位置にまだまだ満足なんてしていなかった

頭が下がる思いだった

『や、なんか熱く語っちゃって恥ずかしいんだけど……。』

そんなことを言いながら
恥ずかしそうに目を伏せた二階堂さん

いつもふざけてる二階堂さんにしては真面目なことを言うから
きっとちょっぴりだけ酔いが回ってるんだろうな

と思いながら私も少しふわふわと揺れている感じがした

『いや、もう俺のことはいいや。
　Aさんはなんでこの仕事してんの？』

「え？
　私ですか？
　うーん……
　メイクアップアーティストが小さい頃からの夢だったんですよ。」

『それって結構小さい頃？』

「そうですね……
　たぶん小学校の低学年くらいだったかな？
　私のひいおばあちゃん、認知症で施設に入ってたんですよ。
　私もたまーに行ってたんだけど私のことなんてきっと分かってもなかったんですよね。
　ひいおばあちゃん、いつも無表情だったんです。」

遠い昔を思い出していた

「だけどある日行った時にひいおばあちゃんがすごくニコニコしてて。
　え？なんで？ってなったんですけど、
　そう言う施設でたまにお年寄りにメイクするイベント？みたいなのがあったみたいで。
　ひいおばあちゃんもアイシャドウとリップしてもらって鏡を見ながらニコニコしてるんですよ。
　すごくないですか？」

「だから……メイクってすごいなって思って。
　人を幸せにする力があるのかなって思ったんです。」

『へー。』

なんだか二階堂さんにつられて私も真剣に答えてしまって

ちょっと恥ずかしくなった