#No! No!

37. ページ37

いざゲネプロがスタートすると
本番前の空気とはガラリと変わった



舞台裏はまさに戦場だった


ステージ上ではニコニコ笑顔で
かっこいいダンスを披露している彼らだったが


1歩ステージから降りると真剣な顔で猛ダッシュして
ササッと衣装を変えて
また笑顔で戻っていく


その間に汗を抑えて髪を簡単にだけ直す


今回のツアーはバックダンサーのJr.もつかないから着替えの手伝いもした


慣れないお手伝いだったせいでもたついて
『Aさん、ありがと。
　あとやるから！』
そう言いながら北山さんはジップを自分で上げながら走ってステージに戻っていった

緊張で手も震えるし
ジップすら上げられない



………情けない



私は無事にこの仕事を終えられるのだろうか



自分のできなさ加減が悔しくて
ギュッと唇を噛んだ



ゲネプロが終了し
昼休憩に入った


その間も忙しく動き回るスタッフさんたち


お手伝いしたい気持ちもあったが
私じゃお役に立てそうにないので休憩場所でケータリングを頂くことにした


サンドイッチとカフェラテをチョイスしてテーブルに座った


「はぁ、、、」



おっきなため息が口から漏れた




両手でカフェラテをそっと包む

暖かい……

へこんだ気持ちが少しだけ癒される気がした




「はぁ…………。」



2回目のため息が出た



『Aさん、どしたんですか？』



優しく声をかけてくださったのは宮田さんだった


「宮田さん……
　ちょっと自分の仕事のできなさ加減にへこんでるんです。笑」


『そんなへこまなくても大丈夫でしょー！
　慣れてないことだからしょうがないですよ！』

ニコニコといつもの笑顔で優しく慰めてくれる

「いや…でもみなさんにご迷惑をお掛けしちゃうのは……ね。」


『大丈夫だって。
　はい！』

顔を上げるとそう言って私の目の前にプリンを置いてくれたのは玉森さんだった


『あ、これミツからの差し入れだって。』


「ありがとうございます。」


『誰だって最初はできないんだから。
　Aさんが頑張ってんのみんな知ってるから。』


「……ありがとうございます。」


ほんとはちょっと泣きそうだったけど
これで泣くのはズルい気がして必死で奥歯を噛んで耐えた

38.→←36.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す