アネモネ

＊ ページ3

『石原さん、お待たせしました。
　よろしくお願いします。』



準備をしていると後ろから声をかけられたので慌てて振り返る


「はい。
　お待ちしておりました。
　本日担当させていただきます、石原と申します。」


深々と頭を下げて
ゆっくりと体を起こして
改めてお客様を見て驚いた



………男性



てっきりお客様は女性だと思い込んでいたので予想外すぎてびっくりした



「では、こちらにどうぞ。」


驚きを悟られないようにできるだけ落ち着いて
お客様をパーテーションで区切られたカウンターの奥にある個室に案内した


『では私はこちらでお待ちしておりますね。』


田中さんもそう言って深くお辞儀をした



個室のドアを閉め、イスに腰掛けると
お客様は深く被っていたキャップを外した



お顔を見て思わず声が出そうになったのを飲み込んだ



Kis- My- Ft2の千賀 健永さんだった


VIP、美容面にこだわり……


田中さんが言っていた言葉に納得した



TVで見た時にかなり美容の知識があることに驚いたことを覚えている

うちのコスメを使ってくださっていたこともその時に知った

その番組を見た日からしばらく
『千賀くんが使ってるものと同じものをください。』
と何人も女の子が買いに来た


まさか本人が買いに来るなんて……

そしてまさか私が対応するなんて……



私の緊張がMAXになった




「いつもうちでご購入してくださってたんですね。
　存じ上げませんでした。」


『あー……
　いつもは松嶋さんに対応してもらってたから。
　僕のことわかります？』


「もちろんです。
　TVでもうちのクリーム使ってくださっているのを拝見しました。
　ありがとうございます。」


そう言うと千賀さんはちょっと恥ずかしそうに微笑んだ



その笑顔がかわいくて
思わずドキッとしてしまった

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