84.過去の己と重ねる ページ36
教師寮への道を歩く。
周りはすっかり暗くなって、しょーとさんが別れ道まで送ってくれるのに感謝した。
轟「なぁ。おまえのなりたい自分が何か聞いていいか？」
「え、」
唐突に、そう聞かれた。
わたしはしばらくうつむいて考える。
「…」
でも、答えられなかった。
「わたしには…そんなのないよ。」
そうとしか言えなくて。
考えたけど結局わからなくて、もうそれも意味がなくなった。
「ただ、願いだけはあるの。」
轟「願い？」
心のそこからずっと願ってきたことなら、ある。
「エリが安全に幸せに暮らせる未来。」
外灯が照らす道を歩きながら、そう言う。
それだけがわたしの"願い"でわたしの"償い"だった。
轟「＿そこにおまえは入ってないんだな。」
顔をあげる。
…すごい、デクさんと同じこといってる。
「…必要ないです。」
轟「何でそうなる、」
悲しそうな怒ってるみたいにしょーとさんが喋る。
「わたしはもう充分だから。これ以上は、余分なモノでわたしには勿体ないモノになっちゃう。」
笑って答えた。
「充分幸せだったよ。…お母さんとお父さんと一緒にいられて、エリが産まれて。それでおねえちゃんになって、いっぱい遊んで…」
だからそれ以上はもういいの。
たしかに幸せだったんだから、わたしは。
轟「それは…寂しいな。」
たったその一言で、いっしゅん思考が止まる。
「さみしい…？わたしのそばにはエリたちがいるよ。」
轟「違ぇ。おまえがそういう考え方してる限り、おまえ自身は"独りきり"になっちまう。」
なにを…しょーとさんなに言ってるの？わたしは別にそんなの気にしないのに。
＿＿
＿＿＿
ちょうど別れ道の外灯の下までついた。少女はぼうっとその顔を見つめる。
轟「…そうか。本当に、わからないんだな。」
色違いの瞳は悲しげに揺れ、小さく目元にシワを寄せた。
＿＿青年は昔の己と少女を重ねたのだ。
友人がくれたきっかけが無ければ彼は今もなお、"独りきり"で憎しみに囚われていたことだろう。
「しょーとさん、大丈夫…？」
聡い少女は自分の少しの異変に気づいたのだろう。その頬に右手を持っていった。
轟「おまえのこと大事に思ってる奴らはちゃんといるんだぞ。」
孤独な在り方を肯定して生きている。
それが自分の在り方だと心から思っている。
＿それは、どんなに寂しいことだろう。
それを青年は知っている。
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Wolf@元フェアリー(プロフ) - めちゃくちゃ感動して静かに泣きました･･･累計で4回くらい泣いたと思います･･･素敵な作品をありがとうございました！ (3月21日 23時) (
レス) @page48 id: ebc545326a (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 号泣しちゃいました…リミオさんと爆豪くん惚れちゃうわぁ〜！ (2023年2月1日 10時) (レス) @page50 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
pino(プロフ) - やぎさん» コメントありがとうございます！こちらこそ最後まで読んでいただき、本当に嬉しいです！(*^^*) (2022年11月21日 23時) (レス) id: 16ca5ec74a (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 主様〜😭やばすぎですー目から滝が…こんな最高な作品を作ってくれてありがとうございます😭 (2022年10月14日 16時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
pino(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます！こちらこそ最後まで読んでいただき、本当に嬉しいです！(*^^*) (2022年9月4日 23時) (レス) id: 16ca5ec74a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pino | 作成日時：2020年2月27日 23時
