48.たった一つ、残されたモノは ページ49
「……」
少女は妹の手を握りながら、床に膝をつき、その表情は苦しげに床を見つめていた。
『自分のために生きなきゃダメだ。』
"自分のため"に、生きる？
わからない、わからない……わからない。
壊れた少女は理解できない。
ごくありふれた、普通の……みんな誰しもが持っている意識。
「わからない…、」
少女の常軌を逸した感覚では、摩耗してしまったその心では、理解できなかった。
エ「おねえ、ちゃん…」
同じ赤い瞳が揺れる。
小さい両手がするりと姉の頭を包み込んだ。
エ「わたしは…ここにいるよ。ずっと、そばにいるよ。」
＿＿＿ああ……最初に、失ったものは何だったか。
『お父さん？』
最初は父親だった。
『あなたたちは、呪われているんだわ。』
次に母親を。
『おめぇらがAと壊理か。……よく来たな。』
その次は家を。
『おまえたちの"個性"は恐ろしいよ…本当に呪われているようだ。………だが、使える。』
そして未来を。
最後に。
彼女に残ったモノは何だろう。
『えへへ、おねえちゃん！』
ただ、彼女は自分に残されたモノを………守りたかった。
遠き日の母との約束。
祖父の元で幼い妹を守ると誓ったあの日。
身を切り刻まれても、妹の幸せな未来を掴むと心に決めた日々。
歪でも、壊れていても、破綻していても、いつか……この身が、果てようと。
エ「どうしたら…おねえちゃんをたすけられる？」
たった一つだけ
自分に残されたモノを守り通す。
守り抜いて、どんな犠牲を払ってでも…どうか人並みの幸福と未来を。
「おねえちゃんに、…っ…任せなさい…、」
＿＿"おねえちゃんに任せなさい！"
意気揚々といつものように放つ言葉とは逆に彼女は弱々しく呟いた。
妹から家族を取り上げたのは自分自身だった。
いつもおねえちゃんぶって、何でも出来るように振る舞って。
「わたしは…本当に、"おねえちゃん"になれてる…？」
心の隅に罪悪感というものが蔓延る。
もし自分が父親を消していなければ、そもそもこんな事態は＿＿＿
一つ不安が消えれば、また次の問題が押し寄せる。
終わらない、終われない。
エ「おねえちゃんは、」
静かな声に促されて顔をあげた。
エ「わたしの＿＿大好きなおねえちゃんで、"ヒーロー"だよ。」
目を潤ませて、エリはAに伝えた。
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たんと(プロフ) - 前読んであの感想をもう一度！と思ったらやっぱり泣いてしまいました…素敵な物語をありがとうございます！ (2月12日 14時) (
レス) id: f0ade18a0c (このIDを非表示/違反報告)
赤い羽根募金ちゃま〜 - 11歳？...やべぇ、同い年だ...((((( (2022年12月1日 23時) (レス) @page24 id: 78bf642dad (このIDを非表示/違反報告)
pino(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます！読んでいただいて、嬉しいかぎりです！ (2022年7月22日 0時) (レス) id: 16ca5ec74a (このIDを非表示/違反報告)
葵 - なんかもう…小説家になれるんじゃないですか？それくらい感動しました！ (2021年10月20日 7時) (レス) @page50 id: 6b19049b00 (このIDを非表示/違反報告)
pino(プロフ) - みづきさん» 泣いてくださったなんて、とても嬉しいです(*^^*)、コメントありがとうございました！ (2020年5月2日 23時) (レス) id: 7816ba7c93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：pino | 作成日時：2020年1月7日 12時
