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話を戻す必要はない。
そう判断した私は、櫻井くんと同じように笑みを浮かべてスプーンを握る手に力を込めた。
「ここ、私も通っちゃおうかな」
何だか少し気まずくて、明るい声色で言ってみる。
「あんま食べると太るよ」
「うるさい」
くすくすと年相応の笑みをくれた櫻井くん。
こんな笑顔見せられたら、そりゃ誰でも好きになるよ。
さっきから、女の子からの視線も何となく感じるし。
「今度、ニノも一緒に来ようよ」
「そうだね」
来れたら、いいな。
だけど、ここに来たらおいしすぎて、私のオムライスもう食べてくれなくなっちゃうかも。
脳裏に意地悪く笑うカズが浮かんで、少しだけ笑みが滲んだ。
「今日ニノも誘ったのに、用事あるって断るからさ。
久しぶりに会いてーな」
「あ、誘ってたんだ？」
「うん、ギリギリにだけどね。
彼女とデートかな」
「さぁ、どうだろ」
またひとつ、嘘を吐く。
嘘を吐かずに生きている人間なんて、どれくらいいるのだろう。
きっと誰もが嘘を抱えながら生きているんだ。
だけど嘘を吐くたび、心をぼかし加工されたみたいに、靄が強くなっていく。
１つの嘘が、また１つ嘘を呼ぶ。
自分を守るために人は嘘を吐くけど、一度吐いてしまったら、一生嘘を吐いて生きていかなきゃならない。
それはまるで鎖みたいだ。
「ごめんなさい」
「え？」
雨を掬うように簡単に、唇が動く。
「ほんとは、カズの彼女さんと会ったことあるし、まぁまぁ知ってるの。
けど人のこと話しちゃだめかなって思って嘘吐いた」
嫌われるかもしれない。
軽蔑されるかもしれない。
でも、言わずにはいれなかったんだ。
「ふふっ気付いてたよ」
伏せていた目をそっと上げれば、肩を震わせて笑う櫻井くんがいた。
私はそんなにわかりやすいのか。
「ごめん」
もう一度謝罪を口にする。
「ほんと変わってないよね、Aは。
相変わらず馬鹿正直」
そう言われて、はっとする。
変わってない……？
きっと“私”も嘘が嫌いだったんだろう。
でも、でもね、櫻井くん。
今の私はとっくに大きな嘘を吐いているんだよ。
分かりもしない話に相槌を打って、分かりもしない話を知ってるふりして、櫻井くんやカズどころか、自分の事すら分からない事だらけなのに。
私は、とっくに嘘つきなんだ。
所詮私は、一条Aの偽物だから。
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ふじしの(プロフ) - ふーかさん» 気づくのが遅れてしまい、申し訳ございません。たくさんフラグを散らしているのでえ？と思っていただけるような展開を描きたいと思います。応援とても力になります。ありがとうございます。 (2018年2月7日 23時) (
レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
ふーか - 最近見つけてここまで読ませていただきました。ほんっとに綺麗で緻密に作られてて読み応えがありました！楽しい作品をありがとうございます！これからも応援してます！ (2017年9月28日 21時) (レス) id: 43fb06ce89 (このIDを非表示/違反報告)
ふじしの(プロフ) - のんさん» ただいまです！お久しぶりですね。怪我は完璧に治りました！素敵、ですかね？笑 人の作品をあまり読まないので表現は自分の感覚で書いていて、伝わってるか正直不安です。笑 でもそう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年9月7日 22時) (レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
ふじしの(プロフ) - えりかさん» はじめまして。ありがとうございます。続きが気になってもらえる作品をかけているならば、とても嬉しいです。ゆったりですが、更新していきたいと思います。 (2017年9月7日 22時) (レス) id: 41c7c19702 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - おかえりなさい！怪我の具合はいかがなんでしょう？ふじしのさんの文章はいつ読んでもやっぱり素敵です…。あぁそんな表現があるのかと毎回感心しきりです。あぁ素敵だなぁ…素敵にきゅんきゅんです。笑。上手く伝えられないなぁ… (2017年9月7日 17時) (レス) id: f20ec4530a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふじしの | 作成日時：2017年5月6日 12時
