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「沙和ちゃん?」

気を悪くさせてしまったのだろうか、と声をかけてみる。顔を上げた彼女はやんわりと微笑んでいた。やはりさっきのは私の見間違いだったのだろうか。

「それが、Aさんの愛なんですね。」

「……そうね。呆れる?」

「いいえ、愛って素晴らしいと思います。」

沙和ちゃんは麦茶を飲みほすと、長居してすみませんでした、と言葉を残して部屋を出た。
私は見てはいけないものを見た気がした。




.


沙和ちゃんに言ったこと、本心だった。私は許せない。犯人も、そして私自身も。
もっと彼に問いただせばよかった。そうすれば何かが変わったかもしれない。彼がなにかを思ってること、私は知っていたから。それでも踏み込めなかったのは私が弱かったから。言ってくれるのを待つだなんて綺麗事だった。彼は私に厄介事を背負わせようとしないから、言うはずなんてなかった。もっと私が聞くべきだったのだ。私は甘えていたんだ。守ろうなんて言っておきながら指の間からするするとこぼれ落としてしまっていたのだ。滑稽だ。
たとえ犯人に復讐を果たしたとしても、私のこの気持ちが満たされることは一生ないだろう。彼はもうかえってこないのだから。

私はこれから出逢うもの全てに彼を重ねるだろう。どれだけ季節が巡ってきても、その季節全てに彼を重ねて彼を想うだろう。寝ても覚めても、時間が経っても。彼を想い、慈しみ、時に心を痛めて、そしてそれでも尚愛し続ける。



次に生まれ変わっても、私はまたきっと君を愛するでしょう。何もかも忘れていたって今日の私がこんなにもあなたを愛しているのだから、その想いはきっと次の私に、あなたへの道しるべをつくってくれるはずです。これで終わりじゃありません。私たちは、これから物語を紡いでいくのです。


さよなら、また。

◆→←これから出逢う全てのものを君に重ねていく



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かたよせ。(プロフ) - 見にくい (2019年9月17日 6時) (レス) id: fc6576e6c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らる子 | 作成日時:2019年9月15日 19時

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