#10「世界を紡ぐ」 ページ26
起きて最初に感じたのは、喉の違和感。
まるで水分が全て抜けたようにスカスカした感覚で、少し痛みも感じる。
「あれ……?」
発した声も空気のように抜けていく。
もしかしなくてもこれは……。
とAが違和感の正体に名前を付けようとした時。
「……くしゅんっ」
「!?」
隣から聞こえたくしゃみにぎょっとして見ると、そこには自分の肩に頭を預けて寝ている真冬。
そして明らかに体温以上の熱さを帯びた温もり。
「なるほどーそっかそっか」
そりゃあすったもんだあったライブから解放され、おまけに泣き腫らし、そのままソファで寝れば……。
「風邪もひきますねぇ……」
特に真冬は人一倍エネルギーを使ってクタクタだったはずだ。
極度の緊張から解放されて、そんな状態でそのままソファで寝れば……。
「熱も出しますねぇ……」
「ん……A?」
「おはよう冬ちゃん」
「なんか暑い……」
「うん。熱あるから、ベッド行こうね」
「ん……」
焦点の定まっていない真冬を何とか部屋に寝かせ、Aはふぅ……と息を吐く。
自分は喉の違和感だけだから、とりあえずお互いにこれ以上悪くならないようにマスクをして、今日は真冬の看病をするしかないだろう。
「よし。とりあえず薬、薬……」
リビングに戻ると、毛玉がチョロチョロと足元にまとわりついてくる。
そう言えば昨日、毛玉もご飯お預けになってしまったんだった。
「ごめんねタマちゃん。今ご飯あげるから」
「アン!」
「冬ちゃんお熱で寝てるから、静かにね?しーっだよ?」
「くーん」
「うん。お利口」
*****
一方、学校の教室では、板谷達が昨日の真冬達のライブの話で持ち切りだった。
「え?和果さんも昨日ライブ行ってたの!?」
「うん。ああいうとこ行ったことなかったから、彼氏にお願いして」
「和果さん彼氏いるんだ!」
「うん。同中の人」
「へぇー、和果さんて、Aさんと佐藤とも中学同じなんだよね?」
「うん。彼氏君がAさん達と同じクラスだったんだけど……」
「へぇ」
「「佐藤ってあんなやつだったんだ」って、びっくりしてた。
私もびっくりしたの」
だって、私はなんとなくあの歌の意味がわかったから。
だから、佐藤君が声を上げた時、足の下から震えが駆け上がってきて、たまらなくなってしまった。
私にはその時、隣で手を繋いでくれる人がいたけど、佐藤君はステージの上で、一人の足で立っていて。
どれだけの勇気が必要だったか。
ただただたまらなかった。
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
に - 最近ギヴンにハマった20代ですが、こちらの小説ほんっっっとうに最高です!!!!夢主の行動・気持ち・考えなど文からとても伝わってきて読みやすいです。お忙しいと思いますが、完結に向けて頑張ってください。楽しみにしております!! (2020年4月30日 13時) (レス) id: e8737ae1a9 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - アニメ終わって落ち込んでたら、映画っ!嬉しすぎて……2020年まで頑張っていけそうです!言ノ葉さん最終話までお疲れ様でした!番外?リクエストも更新、楽しみにしてます!に (2019年9月20日 15時) (レス) id: 7ef2d991dc (このIDを非表示/違反報告)
蓮華 - はじめまして!梶さんと春樹とのお話を書いてほしいです! (2019年9月20日 10時) (レス) id: eb587ffa62 (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - マシュマロが通信制限で使用出来ないのでボードの方に感想、リクエスト書かせて頂きました。御手数ですが見て頂けると嬉しいですよろしくお願いします。 (2019年9月18日 5時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - 美咲さん» コメントありがとうございます!雨月さんめっちゃ美人ですよね……。10話の耳かけスタイルがとても色気爆誕でやばかったです…… (2019年9月16日 21時) (レス) id: 50b948882d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:言ノ葉 | 作成日時:2019年8月30日 15時