鞭声粛粛 日々脳内 藤へ北へ

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= side K =

「うわっ、クサっ！
何これ、お坊さんの匂い？」



ピンポンの音に ソッコー駆けてって
つま先立ちで 玄関のドアを 支えてやってる
ってのに。

それが 出迎えた家主に向かって
イチバンに言う言葉かよ。

しかも《お坊さんの匂い》って なによ。
お前、坊さんの体臭 嗅いだコトあんのか？
てか 臭いっときながら 坊さんの匂いって
そら 坊さん ディスってんじゃねーの？



「･･･ ま、入れって。」


思ったコトを すぐ口にする
相変わらずの 無邪気な《天然噴霧機》に
言いたいコトは イロイロあんだけども。

ソレを 腹に納めて 玄関のドアを 閉めれば


「わあ！ コレか、お坊さんの匂い。」


下駄箱の上のブタを 物珍しそに覗き込む
褐色の 横顔。



「蚊取り線香。お前、知らねーのかよ？」

「や、知ってるよ。知ってるけど･･･
ウチのは電気のヤツ。煙クサくないし？
ブタとか こんな骨董品みたいの
今どき 使ってんの 初めて見たかも。」


「コットウヒン･･･ ･･･。」




わーってる。わーってんだ。
コイツには 何の悪気もねぇってコトは。

思ったコトを まんま口に出せる
素直で まっすぐなヤツなんだってのは。

そいでも これから先、
オトナの世界で 仕事してくにあたって
人並の 気遣いってか
思っても 言わねー方がイイこともあんだって
少しは 教えてかねーと。

なんて な。


2つしか違わねークセに
妙に 俺の方が オトナだって思えた。



.




初めて 一人暮らしをする
大して広くもねぇ 俺の城に

初めて 藤ヶ谷を 招き入れた日。





「んー ･･･きたぁま？ やっぱ 狭いね。」


ソファすら 置けねぇ 小さな 俺の城で
藤ヶ谷は 地べたに、俺はベッドに腰掛けて
アイツの かーちゃんが 作ったって言う
家庭の味 満載の弁当を 食う。

小さなテーブル越しに まだ毒吐く ヤツ。



「線香･･･ 臭せぇなら 消すか？」

玄関の煙が 届きそな距離のリビング で。


「ううん、へーき。も 慣れた。」

綺麗に 箸を使って、綺麗に 咀嚼するコイツは
この世界に入ってから
何をするにも 一緒ってくらい
同じ時間と場所を 共有してきたし、
互いが 互いの一部だなんて クサイ事言える程
近い存在だと 疑わなかった。


ひとつのベッドで 犬コロみてーに
ひっついて 寝れる程に だ。



.



「ねぇ、きたぁま、また泊まり来てもイイ？」


「坊さん臭いって 言わねーなら な。」


.

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