キミが光 ひかりヒカル〜年の瀬編〜 3

71 F side 連れてく ページ10

「･･･じゃ、藤ヶ谷さん？」


下のエントランスまで
車を回してきた と言う 佐野先生に 促される。

ニカが 背負って行こう と言うのを
断って 俺が 床にしゃがむ。


「太輔、乗せるぞ？」

言葉なく 頷く。

渉と ニカの 二人に 抱き起こされた
宏光が 俺の 背中に 身体を預けてくる。

･･･軽い。

一時 ぐっと落ちた 体重が
このところは 少し戻ってきてたハズなのに。


そして ･･･ 冷たい。

背中に 触れる 部分は 宏光の 温かさを
伝えてくる のに･･･
渉が 肩に回してきた 宏光の 腕も･･･
横たわった時に 触れた 頬も･･･
血の気を 失った様に 冷たかった。


「オレ、荷物 持ってくから。」

「ガヤさん、俺も 一緒に 乗るね？」

ニカと 宮田が 一緒に 先生の車に
乗ってくれる らしい。


「太輔、戸締りしたら
俺達も すぐ 向かうから。
･･･大丈夫。
太輔は みつの事だけ 心配してろ。」

そう言う 渉たちを 部屋に残して
俺は 心の 痛みから 自分を 解放してしまった
宏光を 背負い 先生の 車に 向かった。




宏光が 倒れてから どれくらい
時間が 経ったんだろう･･･。

鞄を 取りに 行った 先生が戻り
脈を測ったり 前を はだけて
胸の音を 聞いたりする間･･･

宏光は ピクリとも 動かず
もちろん 意識を 戻すことも なかった。

わずかに動く 胸の揺れだけが
今 宏光は 意識を 失くしてるだけ だから
と、米粒ほどの 安心を 与えてくれる。



深夜3時。


《救急車を 呼んでも 変わらない。》

先生の 言った通り。
他の車や 信号に 邪魔される事なく
スムーズに 車は 病院へと 走る。


バンの ベッドに 横たわる 宏光。
念の為と 酸素マスクを あてがわれた
その姿･･･

つい こないだも ･･･記憶に まだ新しい。


「･･･ヒロ･･･ ヒロ･･･寒いの？」

冷たい 手を 少しでも 温めたくて
病院までの 道のり
ずっと 両手で 擦り続けてた。



.
この時 既に･･･

俺の中の モヤモヤと 渦巻いてた
ある 考えが
ハッキリと 形を 成して 存在していた。

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