17話 ページ3
「え......なんでこれ......」
「あのときは、僕も感情的になっていて、でも後から少し考えてみると、萩原さん、これをすごく大切にされていたな、と」
だから、あのときは僕も、すいませんでした。彼は、そう言って頭を下げる。私は受け取ったネックレスを握りしめながら、彼に頭を上げることをうながす。
そして顔を上げた彼は、こころなしか、どこかかなしそうな表情で私を見て、すいません、と屋上を出て行った。私はその場に一人残されると、柵にもたれて座りこんで、適当に空なんか仰ぐ。季節は梅雨だというのに、最近は晴れてばかりだ。ぴぴぴと黒い鳥がその青空を横切った。
ネックレスを、目の前に提げて見る。どこにあったのだろうか。どうせ塵箱とかに捨ててあったのだろうなとか思って、三角座りに膝を抱く。
彼のことが、いまいちよくわからない。ずっと、正義感の強い典型だと思っていた。別にそれが悪いとか、そういうことを言いたいんじゃないけれど。
少しそっけなさそうな態度は、私に対する嫌悪がはっきりわかったが、それではあの悲しそうな表情はなんだったろう。
きゅっと中央に眉をよせて、少し目線は下を向いて、唇をかみしめて、肩は細かく震えていて。
私への同情だろうか。いや、そんなわけないだろう。私には同情されるほどの価値もないじゃない、あぁいやだな、こんなこと思って。あぁいやだな。
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと、心の中に生まれていく黒いものを、私は吐き出すようにしてため息にした。
やめよう、もう考えたくない。あれは、彼のやさしさであり、そこにはなにもない、彼のやさしさだ、そしてそれを素直に受け取ろう。そういえば、あのときありがとうと言ってなかったな、なんで言わなかったんだろう自分。あとで言わないとな。なんで言い忘れちゃったんだろう。
あぁ。また考えちゃってる。
馬鹿にならないと。馬鹿になってにこにこ笑って、楽しく過ごしていければそれでいじゃないか。
わけがわからなかった。思うことはまばらにたくさんあった。ただそれをどうすればいいのかわからない。そうして忘れていく。
もう全部が嫌い。一番に、自分が嫌。もうどうしたらいいのかわからない。とにかく心臓が重くて、もう、死んでしまうと思う。自 殺とかじゃなく、もっとなんていうか、物理的に。原因不明のまま心臓がこのまま潰されて、私は空に吸われるのだ。
もう自分でも、なにを言っているのかわからないんだ。
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うずのしゅげ(プロフ) - 猫さん» ありがとうございます笑笑 そうですね、本当に彼女には報われてほしいですね☺️☺️ ドスくんが楽器を弾いて、夢主ちゃんが歌ってとかっていう穏やかで幸せな日々がありそうで妄想の翼が広がりますね!!笑 (7月17日 10時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - ズビッズビッっべ、別に泣いてないですけど、夢主ちゃんは幸せであって欲しいですねズビッ (7月8日 10時) (レス) @page24 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - ラいむさん» ラいむ様!!長い間、本当にお世話になりましたー−!!!こちらこそ、今までありがとうございました。受験勉強がんばってきます!何度も何度もしつこいようですが、本当に、ありがとうございました! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 眠夢@低(無)浮上さん» わー−!!うれしいですー!そうですねー、もうこの作品を書くことがないんだと思うと、本当に私も寂しい気持ちです、、わざわざコメントありがとうございました!次作でもよろしくおねがいしますー−! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 黒猫さん» 上から読み返してくださったんですか......!! いやもうまじで、うれしいです!!黒猫様にはお世話になりました、今まで本当に、ありがとうございました!!受験勉強も、がんばってきます! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7
作成日時:2022年8月11日 22時