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15話 ページ1

かちゃと音がして、私はとっさにその音の方を振り返る。単純に恐怖があった。

 扉は、少しだけ開いていた。誰かが、開けたのだ。私は軽く首をかしげながらその方を見つめていると、少しして、その扉がさらに開いた。

「......ぬ、盗み聞き、になるの、かしら」

 そこから現れたのは、暗くてもよく映える赤髪と、極端な垂れ目が特徴的な女の子。どこかで会ったことがある気がして、私は思考を回した。

「あたしは、ルーシー、モンゴメリ。ほら、うずまきで働いてるんだけど、知ってる?」

 そこであぁと思い当たる。そういえば、そんな子がいた気がする。

「あの、盗み聴いちゃったのだけど、さっきのって、あなたのうた?」

「......はい」

 聞かれていたことがはずかしくて、うつむいてそう言えば、彼女は素敵に表情をころがして、よかったわ!とほほ笑んだ。

「その......なんて言うのかしらね、独立したかんじ?最近の音楽にはないかんじ、でも、聴いてるあたしのこころには寄り添ってくれて、っていうか......」

 一生懸命にそう感想を伝えてくれる彼女が愛らしかった。私の気持ちがふっとほぐれて、ありがとう、ございます、と、本当にそう思って言った。

「それにしても......なんで仕事してるの?あなた、もう定時はとっくに......」

「私、すごい愚図で、定時では仕事、終わらないんですよ」

 探偵社がブラックだとか、そんなことが思われないように、なるべく明るい口調で、なんともないことのように、へへっとらしくなく笑って、ごまかす。

「......そう、あ、あなたコーヒー飲む?それと、名前を訊いていなかったわね、ちなみにあたしはモンゴメリ」

「モンゴメリさん......萩原、Aといいます。コーヒー、それではいただきたいです」

 なぜだか、彼女との会話は気が楽だった。この夜の空気がそうさせているのかもしれないし、おたがいのこの不思議な距離感がそうさせているのかもしれない。

 私は、あんまり無言が続くのもよくないと思って、自分から彼女に話しかけてみる。

「そういえば、あなたは、どうしてここに?」

「あぁ、あたしね、うずまきに忘れ物してね、家に帰ってから気づいたから、どうしようかと思ったけど、マスターに電話して。来たら探偵社の階の明かりがついていたから、怖いものみたさで覗いたの」

 あはは、と笑いながら彼女は給湯室でコーヒーを淹れてくれている。

16話→



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うずのしゅげ(プロフ) - 猫さん» ありがとうございます笑笑 そうですね、本当に彼女には報われてほしいですね☺️☺️ ドスくんが楽器を弾いて、夢主ちゃんが歌ってとかっていう穏やかで幸せな日々がありそうで妄想の翼が広がりますね!!笑 (7月17日 10時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
- ズビッズビッっべ、別に泣いてないですけど、夢主ちゃんは幸せであって欲しいですねズビッ (7月8日 10時) (レス) @page24 id: a46c77cf46 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - ラいむさん» ラいむ様!!長い間、本当にお世話になりましたー−!!!こちらこそ、今までありがとうございました。受験勉強がんばってきます!何度も何度もしつこいようですが、本当に、ありがとうございました! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 眠夢@低(無)浮上さん» わー−!!うれしいですー!そうですねー、もうこの作品を書くことがないんだと思うと、本当に私も寂しい気持ちです、、わざわざコメントありがとうございました!次作でもよろしくおねがいしますー−! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)
吹原思木(プロフ) - 黒猫さん» 上から読み返してくださったんですか......!! いやもうまじで、うれしいです!!黒猫様にはお世話になりました、今まで本当に、ありがとうございました!!受験勉強も、がんばってきます! (2022年10月23日 21時) (レス) id: 82c6167370 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うずのしゅげ | 作者ホームページ:https://twitter.com/8YgT1yhKwYPDEd7  
作成日時:2022年8月11日 22時

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