幸福追求より大切な/桃.城 ページ8
「夏城ー、桃が呼んでるぜ」
クラスメイトの口から出た聞き慣れた渾名に、ドアの方へ視線を送った。相変わらずの豪快さで手を振っている。今にも飼い主の元へ駆け出していきそうな犬のような、そんな幻覚すらも見えた。
「よっ」
「どうしたの、桃城君」
「これだよこれ」
そう言って彼は一枚のプリントをちらつかせる。そこには『夏期合宿 申し込み書』の文字。
それだけでは彼の心理が汲み取れず首を傾げると、彼は唸ってもう片方の手で頭を掻きむしった。
「……マネは自己申請がない限り夏期合宿に付いてこねえって言うからよ」
「あ……」
「…………来んだろ?」
不安を隠しきれていない彼の瞳が何だか可愛らしくてクスリと笑ってしまう。笑うな、と言いたげな彼の表情に対して、ゆっくり頷く。
「うん、行く」
「!……本当か?」
「ホントだよ」
数秒の沈黙のあと、彼は安堵の溜息を漏らした。わかり易いなあ、なんて考えていたらまた不満気な顔をするから、やっぱり彼は面白い。
「良かったぁ〜……申請に行ってねえって聞いてマジで焦ったぜ…………」
「ふふ、ごめん。だって皆行かないって言うんだもん」
「でもお前は行けよな。一応レギュラーマネなんだし」
「……そうか。私レギュラーマネになったんだった……」
しっかりしろよな、と言う彼の手から白紙のプリントを受け取った。少し皺が入っているのは──、もしかして、走ってきてくれたから、だろうか。
三年生の先輩方が卒業し、遂に私達が青学テニス部を引っ張っていく立場となった。桃城君は海堂君が部長になったのが少し気に食わないみたいだったけど、それは私が宥めた。今は頑張って後輩をまとめようとしてくれている。
そして準マネージャーであった私は、三年生が引退したことにより、レギュラーマネージャーに昇格。より直接的な立場で、桃城君達をサポートできるようになった。
「じゃ、放課後出しに行こうぜ。んで、一緒に帰るか」
「うん、そうしよう」
桃城君の提案に頷いた瞬間、予鈴が鳴る。彼は慌てた様子で、友達に弄られながら自分のクラスへと戻っていった。
彼がプリントを持ってきてくれたのが少し嬉しくて、頬が緩みそうになった。
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紫梦(プロフ) - メロンさん» 作業用に仁王君の曲探してたら見つけました。とても良い曲でした!笑 ほんとにリクエストに沿えてるか不安でしたが、そう言って頂けて嬉しいです。リクエストありがとうございました!よろしければまたリクエストお願いします。 (2018年8月31日 22時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - Fake聞きながら、描いたんですね笑。可愛かったです!リクエストありがとうございました!また、機会があればよろしく御願いします! (2018年8月31日 22時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 了解です!できるだけご期待に添えられるように頑張ります。少々お時間頂くかもしれません…! (2018年8月26日 8時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
メロン - 紫梦さん» では、お言葉に甘えて…。初で奥手な仁王くんがみてみたいです~(^w^) (2018年8月26日 2時) (レス) id: fd95f0d8fd (このIDを非表示/違反報告)
紫梦(プロフ) - メロンさん» 世界観だなんてそんな…!私には勿体ないくらいの褒め言葉です…ありがとうございます!仁王くんですね、了解致しました!なにか設定やシチュなどのリクエストあればお願いします〜前の仁王君と被るといけないので! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 231b2007bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫梦 | 作成日時:2018年7月31日 21時