紫(side: ) ページ37
＊＊＊
少女に透明のリングを与えた男は言った。
『このリングは、灯された炎を蓄積する性質を持っている』と。
また、『蓄積された炎を、別の器に流し込む性質を持っている』と。
『最初は、このリングに君の夜の炎を注ぎ、リングを通じてその力を手に入れようとしたのだよ。
その方法以外に、夜の炎を手に入れようがなくてね。
未知の部分が多い「夜の炎」が、トゥリニセッテの維持に何かしら役立つかもしれないと思ったのだ』
そう白状した男を、少女は呆然とした様子で受け止めていた。
男はバツが悪そうな顔で、軽く頭をかく。
『けれどその必要もなくなった。
だから君へのお詫びと、「彼ら」へのお礼として、そのリングを君にあげよう』
『君は元の世界に帰らなければならない。
しかし、見た所、この世界に未練を抱いてくれているようだ』
『だから、君が元の世界に帰ってしまっても、私は君をいつでもこの世界に歓迎しよう。
「彼ら」も君のことを、大切な仲間だと考えているようだしね
「彼ら」もきっと、君との永遠の別れなどカケラも望んではいないはずだ』
『けれど慢性的な炎の枯渇という前提が覆らない以上、この世界は君にとって生きづらいものに変わりはない』
『そこで、そのリングの出番というわけさ』
＊＊＊
「これに炎を灯して欲しいんです」
少女は驚きの表情を見せる少年に、透明のリングを見せる。
「恭弥くんの炎を灯して、リングが完全に『紫』に染まるまで。
そうすれば、このリングに炎が蓄積されたことになる。
そして炎が蓄積されたこのリングを私が身につけていれば、徐々に私の中に炎が流れ込んで、私の『炎の枯渇』という問題は解消される、らしいんです」
「ただ、炎が私の体に完全に馴染むまで、おそらく長い年月がかかりますし、その、こちらの世界に戻ってこれる確証もありません……」
少女は不安げに、黙り込む少年へと視線を向ける。
「それでも、待ってて、くれますか……？」
少女の目には、涙が浮かんでいた。
不安でいっぱいになって、わずかに震える少女を、少年は迷うことなく抱きしめる。
「待ってるよ」
答えは、決まりきっていた。
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しおぽん - くっそぅ！お幸せに一生爆発しててくれぃ！！ (2022年2月3日 22時) (
レス) @page45 id: 6db5cc4293 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 最高です雲雀さんお幸せに！！！！！！！ (2021年12月28日 22時) (レス) id: 6f7b9e6ac6 (このIDを非表示/違反報告)
まくすうぇる(プロフ) - 神作であることに間違いない。最の高。ごちそうさまでした！！！！ (2021年5月29日 16時) (レス) id: db51d70f74 (このIDを非表示/違反報告)
ひの - 連載当初から好きで、今も時折見に来てしまいます。これから先、何年経ってもきっと見に来てしまうと思います。この作品に勇気をもらったこともありました。素晴らしい小説をありがとうございます。 (2021年1月13日 1時) (レス) id: 8fc5acefd4 (このIDを非表示/違反報告)
たなきと(プロフ) - 久しぶりにREBORNの小説を読みたくなって、適当に漁っていたら素晴らしい作品を見つけてしまった・・・他の作品とか作っていたら読みたいと思ったのですがアカウント消してしまったのか出てこないのが寂しかったです・・・素晴らしい作品をありがとうございました！！ (2020年7月26日 22時) (レス) id: 8ad013a52b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りり | 作成日時：2017年7月23日 19時
