生前(side:Bermuda) ページ45
通路を抜けて開けたところに出る。
先ほどよりましとはいえ、やはりいささか暗い部屋。
天井についっと目を向ければ、そこにはとある映像が映し出されていた。
『本当に大丈夫なんですか？』
『ああ。もうほとんど痛みもないぜ』
『ふうん。じゃあ表に出なよ、咬み殺してあげる』
『なんでそうなるんだよ！？』
僕と同じく、虹の代理戦争に参加している跳ね馬ディーノくん。
沢田綱吉くんの雲の守護者である雲雀くん。
僕と同じ『夜の炎』をその身に宿す、Aくん。
3人が会話をしている風景を鮮明に映し出す天井。
そしてそれを無言で見上げている影が1つ。
イェーガーくんだ。
「Aくんを監視しろとは言ったけどね」
視線が天井に釘付けになっている彼へ声をかける。
イェーガーくんはピクリと反応すると、体ごと僕の方を向いた。
「何も四六時中眺めていろとは言っていない」
僕は呆れを含んだ声で言うが、イェーガーくんは僅かに目を細めただけで、すぐに天井へと視線を戻す。
彼の目は再びAくんの姿を追っていた。
その様子を見て、僕はため息を吐く。
イェーガーくんもまた復讐者であり、元アルコバレーノ。
明日チェッカーフェイスを打ち倒せば消えてしまう命だ。
Aくんも僕らと同じ元アルコバレーノだったと推測して、手を差し伸べた時もあった。
けれど、とうとう彼女は最後までその手を掴まなかった。
僕らと同じ『絶望』の力を持ちながら、微塵も復讐に興味を示さない。
そんなイレギュラーは、早めに消し去っておくに越したことはない。
そう判断したイェーガーくんは、何も間違っていなかった。
それでも彼は、Aくんを殺すことなく帰ってきた。
イェーガーくんは、映像の中で笑うAくんをじっと見つめていた。
僕は眉をひそめる思いを抱えながら、しかしフッと笑う。
「僕は、アリだと思うがね」
イェーガーくんがちらりと視線を寄越す。
「愛する者を、自らの手で殺す。
むしろ究極の愛の形だと思わないかい？」
僕がそう言ってやると、イェーガーくんは否定するように視線を外した。
「……あんな小娘になど。なんの感情も寄せていない」
「でも似ているんだろう。生前君が愛した、」
「違う」
彼は僕の言葉を遮って、ついに部屋を出て行った。
僕は「苛めすぎたか」と笑いながら、部屋を出る。
復讐以外のことに囚われる心など、捨ててしまえば良いのに。
そんな言葉は、かろうじて飲み込んだ。
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りり(プロフ) - みーさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行しますので、そちらでもよろしくお願いします！ (2017年7月23日 18時) (
レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
みー - ゆ、夢主ぃ！！！覚悟決めたのね…！最後まで応援してるよ夢主！！！ (2017年7月23日 14時) (レス) id: 042acd99ca (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 鈴写さん» どうしても越えられない一線はやっぱりあるのかなと思いまして。汲み取っていただけて嬉しいです！ (2017年7月23日 7時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
鈴写 - 寂しいの話、悲しいなぁ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 0e41f4585d (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - みーさん» 2人に会話をさせていたら自然と風紀委員長がログインしていました(笑) (2017年7月19日 21時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月24日 22時
