配慮 ページ16
チェッカーフェイスは私の様子の変化に気づいていないようだ。
私の答えに「それは何よりだよ」と言って笑った。
チェッカーフェイスは依然として私の背後に立ったまま。
椅子に座って前を向いている今の状態だと、彼の表情を見ることができない。
けれどそれは、私の表情も彼からは見えないということだ。
私はそのことにいくらかの安心感を抱きながら、背もたれにそろりと背中を預ける。
……座り心地抜群だな、これ。
少しの間の後、チェッカーフェイスは「ところで」と話を切り出す。
「この世界に来る前の記憶は、思い出せたようだね」
「あ……は、はい」
川平のおじさんが、未来世界でくれた飴玉のおかげで。
今思えば、飴玉の素となった『憶』というのは、『記憶』という意味だったのかもしれない。
私は「川平のおじさんとチェッカーフェイスは同一人物だったな」と思い出し彼に礼を言おうとしたが、それは私が知るはずのない事実であることに気づいてとっさに閉口した。
「ならば、自分がどうするべきかも悟ったな？」
「はい」
私が淀みなく答えると、チェッカーフェイスは声に安堵を滲ませて「そうか」と呟いた。
私はその声を聞いて、眉を下げる。
「……もしかして、私はこの世界にいるべきではなかったんですかね」
そういう思いが頭の中を占めたのだ。
まあ、私はこの世界において紛れもない異端者だから、仕方ないのかもしれない。
しかしチェッカーフェイスは、私の気落ちした声を聞いて間髪入れずに「それは違う」と否定してくれた。
「ただ、私は以前の『元の世界に執着していた君』を知っているからな。
何も知らない内に『帰る』という選択肢を潰してしまうのは忍びないと思ったのだ」
要するに、チェッカーフェイスは私のことを思って行動してくれたらしい。
私が邪魔者だという訳ではないようだ。
私は安心してホッと息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 776人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りり(プロフ) - みーさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行しますので、そちらでもよろしくお願いします！ (2017年7月23日 18時) (
レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
みー - ゆ、夢主ぃ！！！覚悟決めたのね…！最後まで応援してるよ夢主！！！ (2017年7月23日 14時) (レス) id: 042acd99ca (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 鈴写さん» どうしても越えられない一線はやっぱりあるのかなと思いまして。汲み取っていただけて嬉しいです！ (2017年7月23日 7時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
鈴写 - 寂しいの話、悲しいなぁ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 0e41f4585d (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - みーさん» 2人に会話をさせていたら自然と風紀委員長がログインしていました(笑) (2017年7月19日 21時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りり | 作成日時：2017年6月24日 22時
