幻覚 ページ24
骸はぽかんとした表情を浮かべていた。
そのままゆっくりと目を細め視線を私からそらす。
何か言いたげな様子だ。
何度か口を開けては閉じることを繰り返した後、そらした視線を私に戻す。
その動作からは大層な困惑が感じられた。
骸がゆっくりと口を開ける。
彼が何かを言おうとした、その時だった。
「離れなよ……！」
怒気をはらんだ声が、骸よりも先に私の鼓膜を震わせた。
骸はハッとした表情をしてその場から飛び退く。
さっきまで骸がいた所にトンファーが勢いよく飛んできた。
あれが当たったら脳震盪くらいにはなったかもしれない。
さっきまで骸がいた所、つまり私の目の前を通過して行ったトンファーに驚いて尻餅をつく。
足と首の枷に付いた鎖がジャラリと音を立てた。
「……恭弥くん！？」
骸が私から離れた隙に恭弥くんがこちらにやってきた。
彼は私の拘束具を見て不快そうに顔を歪めた後、首に取り付けられた枷を掴む。
恭弥くんの指が私の首を掠めた。
こんな状況ではあるけど、くすぐったい。離してほしい。
骸を見ると、出会った当初の顔つきに戻っていた。
冷たい光を宿した目を見て、やはり原作は変えられないのだと悟った。
「……クフフ、騎士のご到着ですか」
「悪趣味だね。
君がイタズラの首謀者？」
拘束具を取り外すのは難しいと判断したのか、恭弥くんは私を背に立ち上がった。
靴裏で私の膝を押しのける。
「下がれ」と言いたいらしい。
私は素直に下がれるだけ下がり、柱にもたれかかる形で落ち着いた。
恭弥くんはそれを一瞥して骸に対峙する。
「なんでこの子をさらったの？
強くないし馬鹿だし、手元に置いて利益があるとは思えないけど」
「えっ貶しすぎじゃないですか！？」
そして突然始まる罵倒。
きょ、恭弥くん私のことそんな風に思ってたんだ。
まあ予想はついてたけど！！
骸は私をちらりと見て、クフフと笑う。
「そんなこと、君が一番よく分かっているでしょう」
骸の目を見続けていると、次第に意識が遠のいてきた。
まずい、さっきから……
桜が見える。
「敵の弱点は、多くおさえるに越したことはありませんから」
徐々に沈んでいた意識がついに、ぷつりと切れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 615人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りり(プロフ) - みーさん» お楽しみいただけているのでしたら嬉しいです！これからどんどん絡みを増やしていきたい…ので頑張ります！！ (2017年4月22日 20時) (
レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
みー - あぁーー！！！萌える展開ごちそうさまです！続き楽しみに待ってます！ (2017年4月22日 18時) (レス) id: 042acd99ca (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - liar@嘘つきさん» 多分このすれ違いはしばらく続きますw 応援ありがとうございます！完結まで頑張ります！ (2017年4月10日 22時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
liar@嘘つき(プロフ) - 主人公ちゃんと雲雀さんのすれ違ってる感じが良いですね！良いねボタンがあったら50回以上押してたかもw これからも無理せず頑張ってください (2017年4月10日 22時) (レス) id: fa6b5c8eda (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - さにー☆彡さん» ありがとうございます！平日の更新は不定期になりますが、頑張ります！ (2017年4月9日 19時) (レス) id: 9b4824fc1d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りり | 作成日時：2017年4月8日 0時
