【志麻】忘愛症候群。【歌い手】

理由 ページ21

色々あって夜になり、スーツ姿のセンラさんが病室に入ってくる。

セ｢Aちゃん、起きてほんまに良かったわぁ。あ、センラの事分かる？｣

ニコッと微笑んで話し掛けてくるセンラさん。

貴｢はい、覚えてますよ！｣

そう返すと、良かった、って私の頭を撫でる。

…うらたさんやさかたんにそれを少し弄られていたけれど。
相変わらず仲良しだなぁ、うらたさん達。

すると、病室の扉がまた開いた。

志｢Aっ！！」

その瞬間、少しだけ頭がずきりとした。

はぁはぁと肩で息をして､顔のほくろが特徴的な人。

病室に入ってきたその人に、私は何故かどうしようもなく嫌悪感を覚えた。

私の知り合いには、こんな人は居なかった筈なのに。
何故か、本当にどうしようもなく『嫌い』だと思った。

貴｢…誰、ですか？｣

その人と会話するのにも抵抗があったし、何故私の名前を知ってるのかも疑問だったけれど、私の名前が呼ばれた以上、返事しない訳にはいかない。

その瞬間、病室の空気が一斉に凍りつく。

志｢…え？」

ほくろが特徴的なその人は、目を見開いて此方を見ている。

少し固まった後、その人は私にひきつった笑みを浮かべて言う。

志｢…嘘、やろ？冗談よしてや、A。」

あぁ、嫌だ。
この人の声が、顔が、この人自体が。
どうしようもなく、嫌いだ。

私の名前を呼ばないで欲しい。
私の事を見ないで欲しい。

何故この人がこんなにも嫌なのか、その理由すら私には分からないのに｡

それなのにそんな風に考える私は、きっと最低な人間なのだろう。

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