第2話 始まりの闘志 2 ページ5
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「やっとわかったかボンクラプレイヤーども。オレに向かって千鳥がいなきゃプレーできないとかほざいてたけど、千鳥がいないとプレーできないのはお前らの方だろ？どうせお前らの頭の中には子犬みたいにボールを追いかけることしかないんだから。」
アツヤは無邪気な笑顔を浮かべそう言い放つ。そのあまりにも横柄な態度に、頭に血を昇らせた目深は「なんだとッ！？」
と勢いよくアツヤの胸ぐらを掴んだ。
アツヤは怯むことなく、「なぁに、やるの？」と目深を煽る。
慌てて千鳥が立ち上がり、2人の間に入ろうとしたときだった。それよりも早く、「やめろ」と低い声がした。
白恋の選手たちにとっては馴染みのない声──強化委員の染岡が、目深の振り上げた拳を抑えていた。
「そ、染岡さん…」
「お前らそんなに暇なのか？」
「なんスか染岡サン。オレたちの問題に口出ししないでほしいっスね。"よそ者"なんだから。」
強化委員の染岡に対しても、アツヤの横暴な態度は変わらない。士郎が「アツヤ」と一言注意するように声をかけると、アツヤは肩をすくめて口を閉じた。
「別に喧嘩を止めたいわけじゃねえよ。喧嘩なら後で好きなだけやれ。だが今は試合を見ろ。」
染岡の言葉で、皆は部室のテレビに視線を向ける。丁度雷門対星章の試合が終わったところだった。その点差は9点。先制点の一点以降雷門は星章学園に為す術なく、完敗してしまっていた。
その凄まじい試合展開に、それを見ていた白恋の選手たちは口々に「なんだこれは」「凄すぎる…」と溢す。
「……だがこの試合、星章学園は力の30%も出しちゃいない。」
冷や汗を流しながら、けれど口元には笑みを浮かべ染岡は告げた。その言葉に、白恋の選手たちは皆声を上げて驚く。
その中で士郎と千鳥、アツヤは冷静に画面を見つめていた。
「そうだね。この試合には"彼"が出ていない。染岡くんもよく知る、あの人が……。」
「ああ。あいつが指揮を取ればチームは別物に変わる。」
「アイツって誰」
ベンチに腰掛けながらそう尋ねるアツヤに、染岡は「今にわかるさ」とだけ返した。
「……それでも、ボクたちは勝ちますよ。」
士郎はテレビの画面を見つめ、挑戦的に目を細めた。その言葉に、染岡も「ああ。」と頷く。
試合の一部始終を見た千鳥は、きゅっとペンを握り直した。星章学園──すごいチームだ。けれど、必ず勝つ。必ず勝って、日本一になってみせる。
彼女の穏やかな瞳に、静かな闘志の炎が燃えていた。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
