第11話 幼い感情 1 ページ22
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白兎屋なえをチームに迎えてから、数日が経った。白恋の練習風景は一見いつもと変わらないが、ある一点が大きく違っている。
「うーん、姫様はどうしてもボールの上側に足が当たっちゃうね…もっと中心をよく狙ってみて！」
「うーん、こうやっぺ？」
「そうそう！その調子！」
今までチーム全体の指示を取っていた千鳥が、なえの練習につきっきりになっているのだ。なえはサッカー初心者だ。しかも、全国大会まで時間がない。そして、千鳥には一年足らずで弱小だった白恋中を強豪校に仕立てた実績がある。少しでもなえの技術を上げるために、千鳥になえの指導に専念させているのだ。
「……。」
しかし、それがどうにも気にくわない者がいる。アツヤは少女2人の練習風景を睨みつけるように見つめていた。
「なぁ、お前白兎屋の練習にばっか付き合うのやめろよ」
その日の晩。結局アツヤは千鳥にそのことを問い詰めていた。アツヤはじろりと千鳥を睨みつけるが、千鳥はアツヤのそんな目は慣れっ子だ。きょとんとして冷静にアツヤに「やめろって…どうして？」と聞き返す。
「どうしてもこうしても、お前はチームのレベルアップに助力した方がいいだろ！あんな1人に付き合ってないで」
「でも、白恋が強くなるためには姫さまが強くなることが必要なんだよ。」
「はぁ！？あんなやつ試合に出さなきゃいいだろ。大体、いくら千鳥でも全国大会までにアイツを一端のサッカー選手にすることなんかできねえよ！」
アツヤのストレートな言葉に、千鳥は困り眉になって冷や汗を流す。こういうとき、強く言えないのが自分の悪い癖だと思いながら、千鳥は言葉を選ぶ。
「うーん…わたしは白恋にはやっぱり彼女の力が必要だと思うんだよ。」
千鳥の言葉に、アツヤはますます不機嫌そうになってしまった。
「オレたち兄弟がいるのに、これ以上何が足りないっていうんだよ！」
アツヤの言葉に千鳥はいよいよ困ってしまった。千鳥は白恋は兄弟だけが突出したチームではなく、チーム全員で一つのまとまりのようなチームにならなければ、今後の試合で勝ち抜けないと考えている。今のアツヤの発言こそ、白恋の問題点だと思っているわけだが…。それを口にするわけにもいかない。
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月18日 0時
