【イナアレ】島柄長 (ページ44)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:53,679 hit

第21話兄弟の力 1 ページ44

＊

後半が始まっても、アツヤの挑発的なプレイは収まらない。再び万作にマークにつかれたアツヤはニヤリと口元を歪めた。

「相変わらずトロくせえな…大トロってとこか？」
「黙れ！」

万作が我慢ならずに振り向くも、既にアツヤは万作のマークを剥がしてゴール前にいた。
そこへ士郎からパスが回ってくる。

「これで2点目だ！」

アツヤがシュート体勢に入る。けれど、稲森の突然のスライディングタックルによってアツヤはボールをこぼしてしまった。アツヤは「なっ！？コイツ、FWじゃねえのかよ！」と目を丸くする。

稲森はDFラインから自らドリブルで駆け上がる。「無茶しすぎだ、明日人！」という道成の助言にも「大丈夫！」と返し、稲森は突き進んだ。

「させるかよ！」

染岡に体を当てられ、稲森はボールをこぼす。けれど諦めることなく、再び守備に戻る。稲森は広いフィールドの中を縦横無尽に駆け回っていた。
そんな中、稲森がスライディングタックルで士郎のボールをカットする。こぼれたボールはタッチラインを越えた。
しかし、稲森は立ち上がることができない。痛々しいとも言えるその姿に、万作は眉根を寄せて稲森に駆け寄った。

「明日人、何やってるんだ……」
「決まってるでしょ、サッカーだよ！」

万作の問いに明日人は笑って答え、ゆっくりと立ち上がった。

「サッカーは楽しいものだろ？ミスしたって、思い通りにならなくったって、それがサッカーで…。それがみんなで前に進んでいくってことだろ！」

万作たちは目を見開いた。稲森が彼らに「さあ、勝負はここからだ！」と声をかける。彼らは稲森の言葉にどこか憑き物が落ちたようだった。

「オレたちは何をしていたんだ……」

道成、万作、奥入が頷き合い、それぞれのポジションへ戻っていく。冷静さを取り戻した万作は、素早く皆に指示を出した。

「のりか、10番の動きを教えてくれ！」
「OK！」
「9番が来たらオレが行く。ゴーレムはそなまま19番をマーク！日和、10番のカバーを頼んだぞ！」
「ゴス！」
「わかった！」

雷門のDFに連携が戻っていく。その様に、アツヤは小さく舌打ちをした。

「空野先輩は右サイドへ！士郎くん、もうすこし下がって！」

千鳥の指示を聞きながら、白恋は中盤でパスを回す。しかし、そのボールは中盤まで戻ってきていた剛陣によってカットされてしまった。

＊