【イナアレ】島柄長 (ページ19)

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第9話新入部員 2 ページ19

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「ちょ、待てよ！こんな奴をチームに入れるって…ふざけてんのかよ！？大体、あんた社長だろ！？サッカーをろくに知らない奴が監督なんかするから、こんな馬鹿なことになるんだよ！」

アツヤはチームメイトの「お、おいアツヤ…」という制止の声を振り切って甘兵衛に詰め寄る。しかし、現に今までの試合で甘兵衛が指示を出すことは全くと言っていいほど無かった。それは今のチームの司令塔である千鳥の指示だけで十分勝てていた、というのもあるのだが。

「私もなえもあまり歓迎されていないようだっぺなあ。」

甘兵衛はアツヤに責め立てられてもなお、ハッハッハとおおらかに笑う。そんな態度にアツヤは余計に苛ついているようだ。

「何かご不満やっぺか？」

そんなカリカリしたアツヤの雰囲気を恐れず、なえは小首を傾げてアツヤに尋ねる。アツヤは半分疲れたように、「ご不満も何も、お前サッカー経験どのくらいだよ？」と聞いた。その問いに、なえは指先を顎に当てうーんと唸る。

「30分くらい？」
「ついさっきかよ！マジでド素人じゃねえか！」

なえに向かって怒鳴るアツヤを制するように、すっと士郎が歩みでた。

「それで、君が希望するポジションはどこなんだい？」
「兄貴！こんな奴をチームに加える気かよ！」
「ボクたちにとっては大事なお姫様だ。無下には扱えないだろう？」

『姫』という単語を聞くと、なえの顔はぱっと明るくなった。

「それええな！ウチのことは気軽に『姫』って呼んでな！それでポジションやけど…やっぱ一番目立つところがええなあ。」
「はあ！？」
「エースストライカーやっけ？その辺でええよ。」

マイペースににぱっと笑うなえに、アツヤはとうとう頭を掻きむしって「こいつをどうにかしてくれ～！」と叫んだ。

「千鳥、千鳥もなんか言えよ！」

先程から一言も話さない千鳥に、アツヤは怒りをぶつけるように話を振る。一方千鳥は、未だなえをじっと見つめて悩むような素振り見せていた。

やはり、どこかで見たことがある気がする。それもスポンサーとは関係がないところで。一体どこで……。悩む千鳥の頭の中に、ふと先ほどの士郎の『姫』という言葉が降りてきた。

「……あ。」
「千鳥？」
「……エだ。」
「枝？」

「プリンセス・ナナエだっ！」

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