第62話 vsイプシロン ハーフタイム 2 ページ24
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吹雪は施設内の男子トイレへ入っていった。流石にそこまで追いかけられないので、トイレから出てくるのを待つ。
しばらくしてトイレから出てきた吹雪は顔が濡れていた。顔を洗って気分を落ち着けようとしたのだろうか。千鳥は持ってきたタオルを渡して、吹雪に話しかけた。
「士郎くん、ディフェンスからフォワードに移行するときに、イプシロンの穴になりやすい場所だよ。」
千鳥は手帳を開いて吹雪に見せる。吹雪は顔を拭きながらそのページをしばらく眺めた後、「ありがとう。」と笑った。
「それから、もしディフェンスで困ったら風丸先輩と一之瀬先輩を確認してみて。2人はマークのないところにいる確率が高いから。」
こう続けてから、一度きゅっと口を結ぶ。だけど意を決して唇を開いた。
「もし、1人で攻め上がることになったら。あのエメラルドグリーンの髪の毛の女の子以外には高さを使ってみて。ボールは離さず、少し高めに跳ぶイメージで。それから…」
千鳥の話が終わると、吹雪はふらりと倒れこむように千鳥にハグをした。体が冷たい。
「千鳥ちゃん。ボクは完璧になるよ。完璧に…DFもFWも。」
吹雪は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
吹雪に気付いて欲しい。1人で完璧にならなくてもいいんだと。でもそれを気付かせることは自分にはできない。
ならせめて、彼がそれに気付ける日まで、彼を支え続けよう。
「うん。頑張って。わたしは士郎くんのそばにいるから。」
千鳥はそう言うと、少しでも体が温まるように、吹雪の背中に腕を回した。
試合開始時刻が近くなる。
千鳥と吹雪は2人で会場に戻った。吹雪は皆と一緒にフィールドに走っていく。
千鳥はふっと瞳子と目があった。
「瞳子監督。…監督がそのつもりなら、わたしもわたしの目的のために行動させてもらいますからね。」
千鳥は瞳子から視線を外してそう言い切る。瞳子は何も答えなかった。
2人の間に険悪な雰囲気が流れ出す中、ピーッと後半開始のホイッスルが鳴った。
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第63話 vsイプシロン 隠されていた必殺技 1→←第62話 vsイプシロン ハーフタイム 1
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作者名：いわき | 作成日時：2019年7月4日 7時
