第188話 風になろうよ 2 ページ10
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「お前ら、いつ北海道に帰る予定なんだ？」
3人で屋上のベンチに腰掛けると染岡が口を開いた。
「5日後に飛行機で。雷門理事長がもうチケットも用意してくれてるんです。わたしはそれまでに、お世話になった人に挨拶回りをしようと思ってて。」
「そうか…寂しくなるな。」
「大丈夫ですよ！わたしも士郎くんも、きっとまた会えますから。なんなら毎日お電話しましょうか？」
いや、それはいい、と染岡は顔を引きつらせる。流石に冗談ですよ、と千鳥はくすくす笑った。
「…千鳥、吹雪の呼び方変えたんだな。」
「へ？」
「前までは吹雪先輩、って読んでたじゃねえか。今は名前で呼んでる。」
「ああ、それはですね。」
千鳥は少しだけ俯く。
「わたしが今まで士郎くんのこと吹雪先輩って呼んでたのは、士郎くんを特別扱いしちゃいけないと思ってたからなんです。わたしが士郎くんとみんなの間に壁を作ってしまったら、士郎くんの孤独感がもっと強くなっちゃうかなって。」
でも、もうそんな必要もありません。そう言って千鳥は空を見上げた。真っ青なキャンバスに、円堂や豪炎寺、雷門のみんなの顔を思い描く。
「そんなことをしなくても、もう士郎くんには、わたしには、大切な仲間がいることがわかりましたから。」
空を見上げるわたしに染岡はフッと笑って、そうだな、と言った。
「そういえば、前回士郎くんと染岡先輩はどんなお話をしてたんですか？」
「え"っ、それは、その…。」
「2人で一緒に風になろうねって約束してよね、染岡くん。」
吹雪がにっこり笑って言うと、染岡は怒って「おい、吹雪！」と怒鳴った。顔も耳も真っ赤なものだから、照れ隠しなのかもしれない。
対して、千鳥は何を照れることがあるのだろうと言わんばかりに平然としている。
「2人で、なんて寂しいです。仲間外れにしないでくださいよ、わたしも風になります！」
「ち、千鳥？」
「走れなくても、こう…思いがあれば風になれるはずです！」
「あははっ、そうだね。じゃあ、3人で風になろうね。」
きゃっきゃと盛り上がる千鳥たちに、染岡は「北海道のやつらの感性はみんなそうなのか？」と溜息をついた。馬鹿にされた？と千鳥はムッと頬を膨らませる。
「染岡くん。」
吹雪に促されると、染岡は肩をすくめ「ああ、わかったよ。」と頷いた。
「…なろう、風に。3人で。」
「はい！」
「うん！」
3人で拳を突き合わせる。ふわりと彼らの間を清々しい風が通り抜けていった。
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いわき(プロフ) - 檸檬けーき。さん» 檸檬けーき。さん、コメントありがとうございます！とても嬉しいです！この小説はもう完結していますが、同じ主人公が出てくるアレス版の新作を書き始めましたので、良ければそちらもご覧ください(＊^^＊) (2019年10月18日 10時) (
レス) id: b59bbba1ca (このIDを非表示/違反報告)
檸檬けーき。(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます (2019年10月18日 5時) (レス) id: 31d6ef12c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いわき | 作成日時：2019年10月8日 0時
