今日と未来に幸福を Elice ページ15
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寒さも厳しくなる、今年最後の月の初めの日。
彼と私が、この世に生を受けた日。
「「ハッピーバースデートゥーユー！！」」
カツり、とお酒の入ったグラスを併せて互いに祝いあう。
テーブルにはケーキの代わりにクラッカー、飲み捨てられた缶は
そろそろコンビニ袋の半分を越そうとしている。
「っていうか、いいの？」
「んー？何がや？」
「毎年のことながら、誕生日になる瞬間…私と過ごして。」
「えーの。…ってか、それ言ったらAもそうやろ。」
ええの？俺とで。そう言って彼…志麻君は缶の中身を空にすべく、酒を煽った。
こうやって互いに誕生日を一緒に過ごすようになって早5年……ライブの時も呼ばれるからもうね。
互いに相手を作りにくい活動をしているから、だんだん暗黙の了解のようになっているけど。
目の前にいる相手は、控えめに言っても顔が整っているイケメンで。
一緒に活動しているメンバーも、彼を離すとは思わないのだが。
「私はほら、まぁ…1日の夜にやるからさ。配信も、動画投稿も。」
「俺も似たようなもんやし、別にこの時間くらい…忘れたってえぇやん？」
「聞いたら泣かれるよ。」
「えぇやん！誕生日のその瞬間くらいは…普通の志麻でえぇの。」
「まぁ、それもそっか。」
そんな訳やし、今日は飲むで！なんて、新しい缶を開けだす志麻君。
…大丈夫かなぁ、お酒足りるかなぁ。志麻君がぽちったお酒、大量にうちにあるけど…
っていうか週の半分、志麻君が家に来るからそろそろウチの半分、志麻君のモノで占領されそう。
「Aー、なんかつまみない？」
「志麻君が事前に送ってきたやつなら冷蔵庫に一杯。」
「えー、Aが作ったやつがえぇ！」
「私も今日誕生日なんだけど！？」
「嫌や、Aのがいいー」
俺のいうことはぜったーいなんて悪戯気に笑う志麻君に
これ以上抵抗もできないから、しぶしぶキッチンに向かう。
缶詰と、ほうれん草と…しらす干し、かつお節…
手の込んだものは作らないで、簡単にできるおつまみを作ろ。
熱したごま油に下茹でしたほうれん草を入れて炒めていくと
背中に温かさと重みを感じた。
「ちょっと志麻君重いですー」
「そんなに太っとらんわ！」
「そこじゃないんだけど？」
「えぇやん別にー」
そう言って、隣りで笑ってくる志麻君。
……自惚れない様に気を付けてるんだから、気が付いてほしい。
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