むすんでほどけて【コラボ企画】 (ページ33)

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少し様子がおかしかった折原さんが心配だったけれど、さすがにボスである志麻さんの呼び出しを無視するわけにはいかないので、私は貴賓室に向かった。

ノックをしてからドアを開けて中に入ると、志麻さんがいつものように上機嫌な笑顔で私を部屋の中に迎え入れてくれた。どうやら今日はもう既にお菓子は用意してあるらしく、机の上にはいつものように沢山スイーツバイキングみたいな量のお菓子やスイーツが並んでいた。

なんか、来る度にお菓子の量増えてる気がするんだけど気のせいかな。私お昼ご飯の後に呼び出されてるのに、この量食べると思われてるのかな。

「よぉ、Aチャン」

「こんにちは、志麻さん」

ちょっとだけ慣れてきた私は吃ることなく笑顔で彼に挨拶することが出来た。すると、志麻さんは嬉しそうに笑ってから「かわいいな、おまえ」と言ってまたからかうように笑った。

どっと、心拍が上がった。恥ずかしいのもあるんだけど、この感情は一体なんなんだろう。勘違いしてしまいそうになるから蓋をしたいのに、どんどん溢れてくる。

未だに耐性がつかない私は、顔に熱が登るのを感じながらも返す言葉をどうしようか迷ってしまう。どうすればいいかわかなくて困っていると、最初から返事は望んでいなかったらしい志麻さんは急に話題を逸らして話しかけてきた。

「……俺の弟、性格悪い奴やねん」

「え？」

「なんていうの、自分が欲しいと思ったものはなにがなんでも手に入れたいからって、手段選ばんの。腹違いの兄弟だからか性格似てなくてさ、俺みたいに正面から行くとかじゃなくて、わざわざ近しいとこから徐々に侵入してく、みたいな」

「は、はぁ……」

えと、とりあえず兄弟の愚痴がいいたいのかな。思わぬ話題に、ちょっとだけ混乱してしまった。

機嫌が悪いわけじゃなさそうだけど、なんていうかちょっと複雑そうな顔だ。ボスである志麻さんの兄弟と言えば、裏社会に住んでいる人間という話を聞いたことがあるけど他はなにも知らないし、顔すら見たことがないのでどんな人かは全く分からないけれど。

そう思いながらも、今日は私をじっと見つめる訳じゃなく目線を下げている志麻さんに、なんだか胸が締め付けられた。なんかあったのかな。でも、私なんかがそれを聞いていいのかすらも分からない。だって、彼と私とじゃ住む世界が違うから。

何度も勘違いさせるようなことを言ってくる志麻さんも狡い人だ。彼も私はただの一般人であって、志麻さんと釣り合うような人間ではないと分かっているはずなのに、夢を見せないでほしかった。