序章 ページ2
燃えている。かつて母と呼んだ人が。
燃えている。かつて父と呼んだ人が。
燃えている。かつて帰る場所だった家が。
燃えている。かつて自分たちの世界だったもの全てが。
燃えて、燃えて、燃えてゆく。
天まで焼き尽くそうとするかのように燃え広がる炎に呑み込まれ、火花が飛ぶ音とものが焼ける臭い、そしてその場にいるだけでむせかえるような熱が辺り一面を侵食してゆく。
その場に様子を伺うように立ち尽くすふたつの影。
まだ幼い少女がふたり、目の前のに広がる炎を見つめている。
炎の灯りに照らされた顔はまだあどけない印象だが、その表情は無を張り付けたように感情も思考も何も読み取れない。
やがて少女達は焼け落ちた家から背を向けて歩きだす。
お互い離れないように小さな手をしっかりと繋ぎ、暗く静かな闇夜へと歩を進める。
その足取りは多少おぼつかないようでいて、しかし確かに大地を踏みしめていた。
『行こう、ーー』
『うん、ーー』
静寂に支配された夜にその言葉を聞いていたのは、淡く光る月だけだった。
これは、そんな少女達の辿った道筋。その物語。
誰も知らないお伽噺。
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作者名:真庭朱雀 | 作成日時:2019年8月3日 3時