154馬鹿 お産の瞬間って緊張する ページ4
怪我をして三日が経ったある日。
頭の包帯もすっかり取れて仕事にも復帰した私は休暇の遅れを取り戻すためいつも以上に働いていた。
そして昼休憩の時、食事を終わらせた私は一人ブラブラしていると、一年生だと思われる子供が慌てた様子で桶を持っている。
「虎若に孫次郎じゃん。一体どうしたんだ?」
「い、今メス狼の花子が産気づいたんです!」
「な、なんだって!?」
「だから、今熱いお湯を持って行くんです〜」
そういう彼らの手には有り余るほどの大きな桶の中に目一杯お湯が張っている。
私は彼らの手から桶を奪い取って駆け出す準備をする。
「え、Aさん?」
「君らにはこの桶は重過ぎるだろ?運んでやるから場所教えて」
「は、はい!!」
彼らが先導しその後ろを私はついていく。
走るたびにお湯が跳ねてとても熱いがそんな事も言ってられない。
しばらく走ってついた場所は生物小屋から少し離れた場所だった。
小屋の中に入るとそこには他の生物委員会のメンバーが勢ぞろいしていた。
「Aさん!?」
「挨拶はいいから……で狼ちゃんの様子はどんな感じ?」
「あぁ、さっきから陣痛を繰り返していて……これは難産になりそうだな」
竹谷が額に浮かんだ汗を腕で拭いながらそう言う。
私は持っていた桶を竹谷の近くに置いて狼の様子を見た。
その狼は苦しそうに息をしていてそれに合わせてパンッパンに張ったお腹が微かに上下に動いている。
しばらくするとその狼はビクッと体を強張らせた。恐らく陣痛が始まったんだろう。
竹谷は手早く後輩たちに指示を出していく。私はその邪魔にならないようソッと部屋の端に寄った。
「よし後ろ足が見えてきたぞ!頑張れ、花子!!」
「頑張るんだ!」
竹谷と孫平が狼の傍らで応援している。狼はその応援にこたえるようにいきんだ。
私も声には出さなかったが心の中で応援する。
狼の出産については私は素人なのでここは竹谷達に任せよう。
「(頑張れ、花子!)」
しばらくすると花子のお尻の辺りにモゾモゾと何かが蠢いている。恐らく子狼が産まれたんだろう。
竹谷は子狼を驚かせないように小さくガッツポーズをとる。
その姿を見て私はホッと息を吐いた。
「そうだ花子、自分の子供を舐めて綺麗にしてやってくれ……そうそう」
動物好きな友達の話によると犬は生まれた子供を舐めて羊膜を剥がして呼吸を促すらしい。
この様子なら狼も同じのようだ。
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長月シキカ(プロフ) - MIZUKIさん» 人それぞれ自分が書きやすい書き方というのがあると思います。何より自分が楽しく書くのが一番だと私は思いますよ。 (2016年5月18日 12時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
MIZUKI(プロフ) - 俺、てきとーに考えて、最後どのように終わるなんて考えないで書いてる。そして書いてる最中に思い出すと、それを書いてる…………‥…‥って読みにくいよね。俺、話や書き方?が自分でもよくわからなくなることがあるのだ。 (2016年5月18日 12時) (レス) id: 92a53b009f (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - MIZUKIさん» そうですね、この作品を書き始めた頃ぐらいですかね 私は書く前にどういう終わり方にするか考えてから書くようにしているんです (2016年5月18日 8時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
MIZUKI(プロフ) - 結構前からってドのくらい前よ( ̄△ ̄;)俺は、頭に浮かんだら、それを書く。的な感じでやってるよ。 (2016年5月18日 8時) (レス) id: 92a53b009f (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - MIZUKIさん» コメントありがとうございます この話は結構前から組み立てていたので早く書くことが出来ました。もう少し続きますのでどうぞ見ていってください (2016年5月17日 22時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2016年5月3日 1時