191話 ページ41
「ねぇA。僕、君が背負う苦しみも悲しみも一緒に背負っていきたいって思ってる」
「え?」
「それで、僕の楽しいも嬉しいも、君に分けてあげる。喜びも苦しみも、悲しみも楽しさも全部全部、半分こにしよう。そしたら、Aはもう苦しくないよね」
クダリはそう言いながら、私の両手を握りしめる。
私の手を握るクダリの両手は、微かに震えているように感じた。
「ねぇA。僕、嫌だよ。僕の隣がAじゃないの。他の誰でもない、君じゃなきゃ、僕は嫌だっ」
口元は弧を描いているのに、彼の両目からは大粒の涙がこぼれ落ちる。
まるで真珠のような輝きを見せるクダリの涙につられてしまい、目頭が熱くなってくる。
「……私の背負ってるものは、いずれきっとクダリにとって重荷になります」
「重荷になんてならない。それに僕、こう見えて力持ちだもん」
「……もしかしたら、これから先もっと素敵な人と出会うかもしれませんよ」
「出会ったとしても、僕はAがいい」
「私よりも、笑顔の可愛い子と出会うかもしれませんよ」
「Aしか目に入らないし、僕にとってはAが一番可愛い」
「……私よりも、ずっとずっとバトルが強い子が現れるかもしれませんよ」
「なら、僕がAを鍛える。Aは勉強熱心だからすぐにもっと強くなる。さっきのバトル、すっっごく楽しかったっ! だから、Aも強くなれるよ」
私の問いかけに次々と即答するクダリに、私はこれ以上の問いが思いつかなくなった。
思いつかないというか、嗚咽で言葉が出なくなったというのが正解か。
肩を震わせる私を優しく抱きしめたクダリが、一つ鼻を啜った。
「お願いA。僕に、君の全てを受け止めさせて。僕の隣にずっと笑っていて。僕とずっとずっと一緒にいて」
逃げないように強く抱きしめるクダリに、私の答えは決まった。
泣いた拍子に出た嗚咽を何とか抑え、私は彼の背中に腕を回し彼のスーツに皺を作る。
「お願いクダリ。私を受け止めて。私を貴方の隣にいさせて、ください」
なんとか絞り出した言葉は、クダリに伝わっただろうか。
そんな心配をしたが、それはすぐに杞憂に終わった。
何故なら、ガバッと引きはがした涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったクダリが満面の笑顔で私を持ち上げてくるくると回り始めたからだ。
他人だったら汚く思うだろう彼の今の顔面も、今の私には可愛く、そして愛おしく思えてしまうのだから、もう既に末期なのだろう。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
