155話 ページ5
エンジンスタジアムの廊下で会った時のあの堂々とした態度は鳴りを潜めており、私は一瞬本当にあの時と同一人物であるのかと疑った。
「彼、キバナ君っていうんだけど、彼のSNSに通知が入って確認したらネズ君たちと君が写っている写真が上がっていてね。そこから彼が調べてくれてここが分かったんだ」
大男――キバナと呼ばれた男は至極申し訳なさそうな顔をして小さく頭を下げる。
キバナさんはあの時、私を見下ろし目を、眉を吊り上げていたのとは打って変わり、眉を下げてしゅんとしている。
そんな彼の様子をよそに叔父さんも私と同じ質問をしてきたので、私も今に至るまでの経緯を説明した。
話を聞き終えるたカブ叔父さんは、私を褒める言葉と同時に無茶なことをと軽いお叱りの言葉をかけた。
それでも、最後には叔父さんは「怪我がなくて本当に良かった」と言葉で締めくくった。
そしてマリィさんが、駅での出来事でいかに私がかっこよかったかを叔父さんに力説し盛り上がるのを気恥ずかしさ百パーセントで見守っていると、私の肩に何かが置かれたような感触を感じた。
振り返ると、いまだにしゅんとした顔をしたままのキバナさんが目に入る。
どうやら、彼が私の肩に手を乗せていたようだ。
先程のカブ叔父さんの言葉から思っていたが、よくよく彼を見ると偏見かもしれないが確かにSNSをしそうな容姿をしている。
思い返した叔父さんの言葉のSNSに上がった写真というのは、先ほどマリィさんが撮ったあの写真だろう。
人物と店内しか映っていないはずなのに、よくあの一枚だけでここが特定できたものだ。
若干のうすら寒い何かを感じていると、目の前の男がおずおずと言った様子で私に話しかけてきた。
「あ、あの……さっきは、本当にす、すみませんでした」
キバナさんは形の良い口から小さく、されどはっきりとした言葉を吐き出すと、私に向かって深く頭を下げた。
突然の謝罪の言葉に、私の後ろでネズさんの声が聞こえてくる。
どうやら、叔父さんに何があったのかを聞いているようで、叔父さんから事のあらましを聞いたネズさんの口から「バカなんですか、アイツは」という言葉が吐き出されたのを私の耳は捉えていた。
「……いえ、どうぞお気になさらず」
正直、目の前の彼を見ると昔に受けたトラウマを思い出してしまい、胃の奥底がギリギリと痛むような不快感が沸き上がるが彼が心から反省しているのが痛いほど伝わってくるので、私にはそう言うしか出来なかった。
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長月シキカ(プロフ) - ミサさん» コメントありがとうございます!! レスが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。多くの作品から当作品を見つけていただけただけでも嬉しいのに、このようなコメントまでいただけて涙が出るほどに嬉しく思います^^ こちらこそ閲覧ありがとうございました! (2022年3月29日 21時) (
レス) id: f960b2a2a7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサ - 完結されて日にちが経ちますが、最近見つけたこの作品を読み出してとても面白くページを読み進める手が止まりませんでした。とても良い作品に出会えて嬉しいです。ありがとうございます。 (2022年3月25日 17時) (レス) id: 068b87fb6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：長月シキカ | 作成日時：2021年10月24日 22時
